群馬のむかし話/群馬昔ばない研究会・編/日本標準/1977年
村の信玄堂には十二のお地蔵さまがまつってあったが、あるおっしゃんがお地蔵さまが十三になっていることに気がつきます。
おっしゃんは、ばけものがばけているにちがいないと、ある晩、「おれがけえってくるっちゅうと お地蔵さまは頭をさげてくれるんだけど、ちかごろは頭をさげねえお地蔵さまがひとついるなあ。」と、嘘っぱちを言いいます。する次の晩、おっしゃんをみて ペコペコ頭を下げるお地蔵さまがありました。
おっしゃんが さらに「めえにいっぺんお堂の掃除をしてくれるお地蔵さまがいたっけなあ。お堂がまたきたなくなってきたから掃除でもしてもらいてえもんだ」というと、お地蔵さまは急に、尻からでっけえ尻尾を出して、箒代わりにして右に左に さっさか さっさか はじはじめました。
「うちの地蔵さまはみな、踊りもじょうずにおどってくれるんだっけなあ」と、おっしゃんがいうと、お地蔵さまは、でっけえ尻尾をだしながら、陽気に踊りだします。
おっしゃんが、「もう人間さまをばかすんじゃねえぞ。」と、尻尾をつかんでなげつけると、お地蔵さまはコーンとないて とたんにキツネに戻って山へとんで逃げていきます。
お地蔵さまに化けたキツネを、三回も翻弄する人もいじわる。キツネの素直さが愛おしくなりました。
採話が富岡東高校郷土研究部とあります。高校生が地元の昔話を集めるというのも、今では難しくなっているかもしれません。