どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

十三塚・・茨城

2024年12月17日 | 昔話(関東)

      茨城のむかし話/茨城民俗学会編/日本標準/1975年

 

 ずっとむかし、筑波の裏山にさびしい村があって、そこにごんべえどんが、一人で住んでいた。ぼんべいどんは、ひとりぐらしでさびしかったのか、動物が大好きで、とくにいっぴきのネコをかわいがっていた。畑仕事がおわって家に帰ると、ネコに話しかけるのが楽しみだった。

 ある日、ごんべいどんは、きゅうにさがしものをおもいだして、めったにあがったことのない物置にあがったが、いきなりネコがでてきて、ごんべいどんの足に絡みついた。ネコはごんべいどんがあがろうとするたびに、足に絡みついたので、ごんべいどんは、物置にいくことはやめにした。その晩、便所に行こうとしたら、また、ネコが出てきて、あとになったりしてついてきた。用をすませて、寝床にもどったら、ネコは安心したようにねてしまった。

 どこへ出かけるにも、ネコがついてくるので、ネコをよんできいてみると、物置にはでっかいネズミがいて、おじいさんを食おうとしていたという。はじめてネコの心がわかったおじいさんに、「ひとりだけでは、この大ネズミをやっつけることはできねえ。」という。ちょうどいいことには、なかまのネズミが十一ぴきいるので、みんなにたのんでネズミを退治して見せるという。

 ごんべいどんは、たいそう喜んで、とっておきの米で、赤飯をたいて、ごちそうし、ネコの好きなかつおぶしもいっぱいふるまった。せいぞろいしたネコは物置にいったようで、「ギャー、ギャゴーッ」「チ、チュー、キッ、キュー・・」「ガウ、ギャオー」と、ものすごい叫び声が聞こえてきた。ものの一時間ほどもたったころ、ごんべいどんが、物置にいってみると、大ネズミも、十二ひきのネコたちも、みんな血だらけになって死んでいた。

 ごんべいどんは、死んでしまったら、敵も味方もない。いくら動物たちでも、命はとうといもんだと、ネコやネズミの墓を作ってやった。

 いつのころからか、村の人たちは、この墓を十三塚とよぶようになったんだと。


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