サルカメ合戦/村上公敏・編訳/ちくま少年図書館60/1982年
オボンとアンキルという二人の男は、サトウキビの汁で作ったパシという酒がたまらなく好きだった。村にあるパシは、みんな飲んでしまい、パシで一儲けしようと、水牛を売って、近所の村を探し回ってパシを手に入れ行商にでかけた。
酒を入れた竹筒は重く、交代してかつぎ、声を張り上げたが、なかなかうまくいかない。 夕方あたりが暗くなる寸前に、道路際に住んでいるおばあさんが、おわん一杯のパシを注文し、五センタが手に入った。硬貨が一枚だけなのでどちらが持つかで争いになった。二人は、パシが売れたとき竹筒を持っていたものが、そのときに売ったお金をもち、かわりに竹筒は、相棒がもつことにした。おばあさんに売れたのはオボンが担いでいたときだから、五センタ硬貨はオボンが持つことになり、かわりに竹筒はアンキルがかつぐことになった。
日が暮れたが、町はまだ遠い。どんどん歩いたが、さすがに疲れて、一休みすることにした。のども乾いていたので、オボンは、パシを売ってくれと竹筒を担いでいたアンキルに提案した。アンキルも異存はない。おわん一杯のパシをオボンにつぎ、五セント硬貨を受け取った。
しばらくいくと、こんどはアンキルが、パシをいっぱいだけ売ってくれるよう話を持ち掛けた。オボンが気前よく応じると、硬貨はオボンのもとへ。二人は歩きはじめたが、あまり遠くいかないうちに、オボンがパシを請求するしまつ。
こうして、一杯だけ、一杯だけと、お互いが休憩する機会がどんどん増えた。そのうち、とうとう、持っていたパシを、お互いの間で売り払って・・いや、飲み払ってしまった。
ふたりとも、酔っぱらったのか、明かりの方へ足を向けていった。「あそこまでいって、かせいだ金の勘定でもするか‥。」