どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

まぬけな行商人・・フィリピン

2025年03月06日 | 昔話(東南アジア)

     サルカメ合戦/村上公敏・編訳/ちくま少年図書館60/1982年

 

 オボンとアンキルという二人の男は、サトウキビの汁で作ったパシという酒がたまらなく好きだった。村にあるパシは、みんな飲んでしまい、パシで一儲けしようと、水牛を売って、近所の村を探し回ってパシを手に入れ行商にでかけた。

 酒を入れた竹筒は重く、交代してかつぎ、声を張り上げたが、なかなかうまくいかない。 夕方あたりが暗くなる寸前に、道路際に住んでいるおばあさんが、おわん一杯のパシを注文し、五センタが手に入った。硬貨が一枚だけなのでどちらが持つかで争いになった。二人は、パシが売れたとき竹筒を持っていたものが、そのときに売ったお金をもち、かわりに竹筒は、相棒がもつことにした。おばあさんに売れたのはオボンが担いでいたときだから、五センタ硬貨はオボンが持つことになり、かわりに竹筒はアンキルがかつぐことになった。

 日が暮れたが、町はまだ遠い。どんどん歩いたが、さすがに疲れて、一休みすることにした。のども乾いていたので、オボンは、パシを売ってくれと竹筒を担いでいたアンキルに提案した。アンキルも異存はない。おわん一杯のパシをオボンにつぎ、五セント硬貨を受け取った。

 しばらくいくと、こんどはアンキルが、パシをいっぱいだけ売ってくれるよう話を持ち掛けた。オボンが気前よく応じると、硬貨はオボンのもとへ。二人は歩きはじめたが、あまり遠くいかないうちに、オボンがパシを請求するしまつ。

 こうして、一杯だけ、一杯だけと、お互いが休憩する機会がどんどん増えた。そのうち、とうとう、持っていたパシを、お互いの間で売り払って・・いや、飲み払ってしまった。

 

 ふたりとも、酔っぱらったのか、明かりの方へ足を向けていった。「あそこまでいって、かせいだ金の勘定でもするか‥。」


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