日本の昔話3/ももたろう/おざわとしお・再話/福音館書店/1995年
炭焼き窯で炭を焼いていたおじいさんには七人の息子と一人の娘がいました。
息子たちは「真っ黒けの炭焼きやろうやあい。炭焼きやろうやあい。」と馬鹿にされるので、父親を海に連れて行って岩の上におきざりにしてしまいました。
この話を聞いた娘は、「父さんに、なんてことをしたのだろう」と浜辺にかけつけましたが、海はくらくてなにもみえませんでした。
おじいさんは、海の岩でおぼれかけていました。そのとき大きな鮫が岩のすぐ近くまでゆっくり泳いできました。
おじいさんは死を覚悟しましたが、鮫は、いっこうにおそいかかってくるようすがありません。おじいさんがもいきって、その大きな鮫の背にとびのると、あっというまに砂浜にたどりついていました。
おじいさんは、鮫がまだ近くを泳いでいるのをみて、娘に一番大きな牛をつれてこさせ、鮫にやりました。
おじいさんは、娘から息子たちの悪だくらみをきいて、たいへんおこりました。おどろいた息子たちに、「海の上で宝物を見つけた。おまえたち、あしたになったらみんなでいって宝物をとってきなさい。」といいました。
思いがけない話を聞いた息子たちが舟をこぎ沖に向かうと、おじいさんはふんどしをもって浜辺にたちました。そしてふんどしを海に向かって高くかざし「神さま、どうか風をおこして、息子たちをこらあしめてください」というと、ふんどしは風にとばされてまいあがり、はるか沖の方にとんでいきました。するとたちまち大風がおこり、ぐるぐると海の水を空にまきあげました。息子たちの舟も沈んでしまいました。
たつまきがおきるようになったのは、このときからだといわれている・・。
息子たちが父親を海に置き去りにするのは、善悪で考えるととんでもないことですが、竜巻のおそろしさを表現するには、こうしないと伝わらないのかもしれません。