どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ようきな大工・・リトアニア

2024年11月17日 | 昔話(ヨーロッパ)

 ねえねえ、きょうのおはなしは・・/大塚勇三:再話・訳/福音館書店/2024年

 

 大工道具をせなかに、手にはバイオリンをもった大工が、カミナリとオニと、一緒に一軒の小屋をたてました。(こうした組み合わせは昔話ならでは!)。

 小屋のそばに畑をつくり、ダイコンの種をまきました。ところが困ったことに、一人の魔女がやたらとダイコン畑をあらしにやってくるのです。
 かわりばんこに見張りすることにし、はじめにオニが見張りをつづけました。夜更けに魔女が鉄のそりでのりこんできました。魔女が、「ガラガラ ゴロゴロー! ほをかけた てつぞりで てつぼうさまが おでましだ!」と言いながら、鉄の棒でやたらめたらとオニを殴りつけたので、オニはキイキイひめいをあげ一目散に逃げかえりました。

 次の晩は、カミナリが見張りにいきましたが、これもやっぱりオニとおんなじめにあって、魔女の鉄棒で、血の出るほどぶたれました。

 さて三番目に大工が見張りに行きました。真夜中になると、「ガラガラ ゴロゴロー! ほをかけた てつぞりで てつぼうさまが おでましだ!」だと、怒鳴り声が聞こえてきました。しかし大工が、ねむけざましにバイオリンをひきならしていたので、その音に聞きほれた魔女が、「わしにも、ちょっと ひかせておくれ」と、頼みました。大工がバイオリンをかしてやりましたが、魔女はまるっきり音がだせませんでした。

 大工は、「そりゃ 指のせいだね。あんたの指は、ごつくて ぶさいくだね!」といい、切り株の割れ目に鉄のくさびを挟んでから、魔女の指を割れ目に入れるよういいました。魔女が割れ目に爪をつっこんだとたん、大工が鉄のくさびを抜いたので、魔女の爪は、ガチンと、はさまれてしまいました。それから魔女の鉄棒をとりあげ、その鉄棒で魔女をさんざんたたきました。魔女はあらん限りの力を絞って、逃げて行ってしまいました。

 魔女は追い払いましたが、大工とカミナリ、オニが いっしょにすんでいるのが、具合悪くなってきました。カミナリはしょっちゅうゴロゴロやるので、夜はおちおち眠れません。そこでオニの提案で、おどかっしこして、ほかのやつらをちぢみあがらせたやつが、ここにのこって、小屋の主人ななることに。

 オニは、すさまじいさけび声をあげ、地獄のようなさわぎをおこしましたが、大工もカミナリも、じっとこらえて、ちっともこわがりませんでした。

 カミナリが、天がくずれておっこちてくるようなおそろしい音をたてると、オニはおったまげて、煙突からとびだすと、それっきり帰ってきませんでした。

 そのつぎに、大工が、「ガラガラ ゴロゴロー! ほをかけた てつぞりで てつぼうさまが おでましだ!」と魔女のまねをすると、カミナリは、あの魔女がやってきたのだと思い込み、きもをつぶして、あろをもみずに、にげていってしまいました。

 こうして、ようきな大工が、魔女や、カミナリ、オニと手をきって、小屋で楽しくくらしましたさ。

 

 この三人組、結局いっしょになれませんでしたね。


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