「若返りの水」は、おじいさんが水を飲んで若返り、その話をきいたおばさんが若返りの水を飲みすぎて赤ん坊になる話。正月版もあります。
日本だけでなく韓国にも同様の話がありました。(世界の水の民話/日本民話の会 外国民話研究会・編訳/三弥井書店/2018年)
木こりが山へ木を切りにいき、沼の水を飲むと、ぐっと若返ります。男は妻から追い出されそうになりますが、わけを話すと妻も若返ろうと山へ。男が山で見つけたのは妻の着物のなかの、赤ん坊。赤ん坊ですが、水を飲んだらこんなに小さくなったとのこたえ。
後日談がある「若返りの水」(新しい日本の語り9 渡部豊子の語り/日本民話の会/悠書館/2014年初版)に、柴田敏子さんが語ったという話。
赤ん坊になったおばあさんを育てるのに苦労した爺様が、年とりの神様から「年とりのへら」を借りて、お婆さんをなでていき、22歳のところで、へらをとめ、若くなった婆さまと、人のため、世のために尽くします。
季節感があったり、お爺さんの苦労に目が届くなど、語り手のあったかい目配りのある話で、おはなし会で聞いたとき、昔話の味がつたわってきました。
15,6回なでたところで「おら家の婆さま、こんなに器量よしだったべが」と笑いを誘います。
「赤んぼうになったおばあさん」(かもとりごんべい/稲田和子・編/岩波少年文庫/2000年初版)では、山の神がでてきて、一口しか飲まないように助言するのですが、おじいさん、このことはおばあさんに伝えなかったようです。
擬音語が楽しいのが松谷みよ子さんのもの(読んであげたいおはなし 松谷みよ子の民話・上/筑摩書房/2002年)
おじいさんが水をさがす場面
水ぁ どこだえ
冷たえ水ぁ どこだえ
水の音
こっつ こっつ
こっつ こっつ
ばさまが水をさがす場面
若え水っこぁ どこだえ
若え水っこぁ どこだえ
水の音
こっつ こっつ
こぽ こぽ
こっつ こっつ
こぽこぽ
繰り返しのリズムが気持ちよく響きます。
じいさとばあさ(文と絵 梶山俊夫/フレーベル館/1994年初版)
昔話には、じさまとばさまがでてくるのが多いので、このタイトルだけでは、どんな内容かわかりにくいのですが、「若返りの水」の桃バージョンです。一方は水を飲み、この話では桃を食べることで若返ります。
二人暮らしのじいさとばあさ。
ある日、しばかりにいったじいさは、桃の木をみつけ、その桃を食べてみたらうまいことうまいこと。
仕事も早々とかたずいて家にかえってきた。
ところが、若者になったじさをみて、ばあさはびっくり。
じいさは、ばあさもいって食べてこいと、ばあさを送り出します。
しかし、ばあさは、いくらまっていても帰ってこない。
じいさが、桃の木に行って見れば、おぎゃあおぎゃあと、赤子の声。
それからじいさは、赤子になったばあさと暮らすことに。
ばあさがあかんぼうになるまで、桃を食べ続けるところが、昔話の世界。
じいさが、あかごになったばあさと、おくる二度目の人生は?
「うまいことうまいこと」「いくがいくがいったって」と繰り返しのリズムが昔話風の世界にいざなってくれます。
絵は茶が基調になって、やわらかい感じです。
あかんぼじいさん/作・画 高橋五山/全甲社/2013年(復刻版)(12画面)
赤ん坊になるのは欲張りでわがままなおじいさん。1953年初版の紙芝居。
草刈りに行ったとき、権じいさんから、鎌を変えてくれと言われ、よくきれる鎌を貸してあげた彦じい。権じいは、かごいっぱい草が取れると、鎌を返さず さっさと帰っていきます。
残された彦じいは、飛んできた鶴が、見慣れない泉で ごくりごくりと水を飲んでいるのを見ます。鶴が水を飲むと、灰色に汚れた羽は、まっしろになり、あたまの赤い色も もえる火のようにかがやきました。としよりの鶴は、若くなって空に舞い上がっていきます。
彦じいさんが、水を飲んでみると、一口で元気になり、二口飲むと目がはっきりし、三口飲むとまがった腰が のびました。
おばあさんにも飲ませてやろうと、ヒョウタンに水を入れてうちへかえった彦じい。彦じいから話を聞いたおばあさんが三口水を飲むと、若くなります。それをみていた権じいが、ヒョウタンをもぎとるようにして帰っていきました。
若くなった二人が話をしていると、おぎゃあ おぎゃあと、赤ん坊の泣き声。よくよくみると水を飲みすぎた権じいが、赤ん坊になっていました。
やさしい彦じいとおばあさん、新田のお作ばあさんにも、お寺のおしょうさんにも、土橋の茂十どんにも水をあげようとしていました。