三重のむかし話/三重県小学校国語教育研究会編/日本標準/1977年
涼しい秋のころ、九州にすんでいた(魚)ボラが、どこかに遊びにいこうと相談した。お伊勢まいりに行ったことがあるボラが、伊勢はいいところだと自慢したしたので、みんな喜んでいくことにした。
何日も泳ぎに泳いで、やっと伊勢の海についたが、何日も泳いだので、みんな疲れて、ぐっすり眠りこんでしまった。それを見つけた伊勢の漁師が、「あそこに、ようけボラがいる」「いっぱいボラがいるぞ」と、口々に言って、ねむっているボラが、目をさまさないように、そっと網を下ろした。
いちばんはじめに目をさましたおやぶんボラが、まわりの網を見て、「みんなおきろ、おきんか!」と大声でどなった。みんなは なにがおこったのかよくわからずきょとんとしているだけ。
おやぶんボラが、「おれのいうことをよくきけよ。おれに号令をかけたら、おもいっきり空へとびあがれ」と、どなると、みんなは疲れも忘れて、ぴょーんぴょーんととびあがったとおもったら、ドブンドブンという音とともに、網の外へ出た。そんなことから、ボラは空高くとぶことができるようになった。
ボラたちは、空高くとびあがって、高い空からお伊勢まいりをしたんやとさ。
ボラは、ときに体長の2-3倍ほどの高さまでジャンプするというから、そのようすを見た人がつくった話でしょうか。
また、おおきくなるにつれて呼び名を変化させていくというのも、ついでに紹介したい魚。