ソリア・モリア城/世界むかし話15 北欧 ソリア・モリア城/瀬田貞二 訳/ほるぷ出版/1979年初版
ソリア・モリアの城/ラング世界童話全集9 みずいろの童話集/編訳 川端康成・野上彰/偕成社/1978年初版
たまたま読んでいたなかに、おなじ話があった。ところが同じ話なのにうける印象がまったく別。
ラングのほうがよみやすくなっていた。ラングが手を入れていたのははっきりしているが、これほど違う印象があるのも珍しい。
ただ、なかには首をかしげるような表現もあって、訳が複数ある話では、比較しながら自分のものとする必要をあらためて感じた。
(ラング版の出だし)
むかしむかし、ハルボアというむすこのいる夫婦がありました。ハルボアは、小さな子どものときから、仕事をするのがきらいで、灰のなかにすわって、灰をなでまわしていました。
(世界むかし話版の出だし)
むかしある夫婦に、ハルホールというむすこがいました。ごく小さいときから、その子はなにもしたがらず、ろばたにすわって灰をかきならしているだけでした。
この話の中に、鬼(ラング版)がでてくるが、(世界むかし話版)では、トロルというおなじみの表現になっている。この鬼が人間のにおいをかぎつけるところでは
(ラング版)「くんくん、キリスト教の信者のにおいがするぞ。」
(世界むかし話版)「ふんふん、ふんふん! なにやら人間の血のにおいがするぞ!」
「キリスト教の信者」のにおいというのは余分か。