黒いどろぼうと谷の騎士/ラング世界童話全集9 みずいろの童話集/編訳 川端康成・野上彰/偕成社/1978年初版
アイルランドの昔話をラングが再話したもの。
映画の中に映画のシーンがあったり、劇のなかに劇のシーンがあったりするが、この話の中には別の話がうまくでてきて、話中話を楽しめるしかけになっている。
三人の王子が継母から、あらあらしい<鈴の馬>をつれてくるようにいいつけられる。
谷の騎士がもっているという<鈴の馬>を探すに旅に出た三人の王子は、途中黒いどろぼうとよばれる男にであう。
<鈴の馬>を連れ出そうとすると、鈴がさわがしいひびきをたて、谷の騎士のところへ連れていかれる。
王子たちが、ぐらぐら煮立っているかまに投げ込まれそうになるが、同行していた黒いどろぼうが、谷の騎士を感心させる話を、三つ話して聞かせ、王子は助かることになるという展開。
王さまのお妃がなくなって、継母が、得体知れない召し使いから王子を亡き者にするようふきこまれる前段の展開からいうと三人の王子が主人公に思えるが、後半は、黒いどろぼうだけが目立つ。
王子一人を救うために一つの話をするが、短くてもたのしい。
王子と黒いどろぼうの出会いの場面もさっぱりしたもの。
長い話だと、途中経過がわかりにくくなる話もあるが、わかりやすくなっています。