小児期C型肝炎「重症化せず」 久留米大助教ら疫学調査 350人対象国内最大規模 [福岡県]
2017年10月25日 (水)配信西日本新聞
C型肝炎は、ウイルス感染が原因で発症し、国内の感染者は150万~200万人と推定されている。自覚症状がなく、肝硬変や肝がんに進行して感染が分かることも多いとされる。
調査は1986~2015年に出生し、17歳未満でC型肝炎に感染しているとの診断を受けた348人(診断時の平均年齢3・1歳)を対象に実施。その後の病状の変化などについて、国内65の医療機関からデータの提供を受けて調査した。
水落助教によると、348人の中で肝硬変や肝がんの診断を受けた人はおらず、肝臓の組織や細胞を調べる検査を実施した147人についても、病変なしと軽度が9割を占め、重度の人はいなかった。
近年、C型肝炎の治療を巡っては、治療効果の高い新薬が開発され、成人では公的医療保険の適用も受けている。小児では安全性が確立しておらず未承認だが、水落助教は「(今回の調査で)小児期に重症化しにくいことが分かり、治療方法を慎重に検討できるようになった」と話している。
また、疫学調査では近年、感染経路のうち9割超を母子感染が占めていることも明らかになった。
出生年別で10年ごとに3群に分け、感染経路を調査したところ、母子感染の割合が、86~95年生まれで61%だったのが、96~2005年生まれで92%、06~15年生まれでは99%となっていた。
C型肝炎の母から子への感染率自体は1割程度で、実数は増えていない。1992年以降、献血時の検査が適切に行われるようになったことで、輸血感染の割合が86~95年には35%だったのが、96年以降ゼロになったのが影響したと考えられる。
水落助教は「通常の妊婦健診にC型肝炎の血液検査は組み込まれており、感染者を把握し、治療を続けることでいずれ撲滅できるとはっきりした」と語る。