大都市のマイナス顕著 外国人依存に懸念も 人口動態調査
2018年7月12日 (木)配信共同通信社
総務省の調査では、20政令指定都市の半数で日本人の人口が前年を下回るなど、少子高齢化を背景に大都市でも人口減少の傾向が顕著となった。日本人が減るのを尻目に外国人の人口は増加しているが、人口減少対策として外国人に依存するのは「問題の先送りだ」と懸念する声も上がる。
▽150万人割れ
政令市で人口5位の神戸市。1月1日時点の人口は前年比約5千人減の149万6千人と150万人を下回った。
市の人口が本格的にマイナスに転じたのは2012年。出生数が死亡数より少ない自然減が続き、仕事を求めて東京圏や大阪市に移る人も増えているためだ。市の担当者は「起業する若者向けの移住促進などに取り組んでいるが、他の地域との違いを出すのは難しい」と頭を抱える。
政令市では新潟など計10市がマイナスに。新潟市では、15~24歳の転出が転入を上回っており、進学や就職を機に首都圏へ引っ越すケースが多いという。少子高齢化の進行も相まって、大都市でも本格的な人口減少社会に突入した形だ。
▽東京独り勝ち
安倍政権は対策の柱として、東京一極集中是正を掲げる。だが、東京都は全国トップの7万2千人増で、交通アクセスが良い周辺都市も含め「東京独り勝ち」が続く。
つくばエクスプレスで東京・秋葉原まで約30分の千葉県流山市の「流山おおたかの森」駅。朝のラッシュで混雑する構内で、都内が勤務先の女性(37)は「子どもが2人いるが、小児科はいつもいっぱいで予約しないと診てもらえない」と苦笑いを浮かべた。
人口18万人の流山市は、05年のつくばエクスプレス開業前に比べて3万人増えた。市の担当者は「子育て支援を拡充するなど、共働き家庭が暮らしやすくする政策に取り組んだ成果が出ている」と話す。
総務省の担当者は「職場までの交通アクセスが良く、不動産も手頃な都市で人口が増えている」とみる。
▽受け入れ拡大
一方、日本に居住する外国人の人口は、長崎県を除く46都道府県でプラスとなった。留学生や技能実習生のほか、リゾート施設に中長期的に滞在する外国人も多くなっているという。増加率が16・64%と最も高かった熊本県は、大規模農業に従事する実習生らを積極的に呼び込んだことが主な要因だ。
政府は、地方でも深刻化する人手不足対策として外国人の新たな在留資格創設を今年の骨太方針に盛り込んだ。20年東京五輪・パラリンピックに向けて、外国人の増加は続くとみられている。
だが、慶応大の中島隆信(なかじま・たかのぶ)教授(経済学)は「東南アジア諸国も出生率が低下しており、実習生を送るほどの豊富な労働力をいつまでも保てない。中国などと労働者の奪い合いになる可能性もある」と指摘。「国内で少子高齢化が進み、労働力が確保できなくなった理由を十分に検証しなければ、根本的な問題は解決しない」と強調した。
2018年7月12日 (木)配信共同通信社
総務省の調査では、20政令指定都市の半数で日本人の人口が前年を下回るなど、少子高齢化を背景に大都市でも人口減少の傾向が顕著となった。日本人が減るのを尻目に外国人の人口は増加しているが、人口減少対策として外国人に依存するのは「問題の先送りだ」と懸念する声も上がる。
▽150万人割れ
政令市で人口5位の神戸市。1月1日時点の人口は前年比約5千人減の149万6千人と150万人を下回った。
市の人口が本格的にマイナスに転じたのは2012年。出生数が死亡数より少ない自然減が続き、仕事を求めて東京圏や大阪市に移る人も増えているためだ。市の担当者は「起業する若者向けの移住促進などに取り組んでいるが、他の地域との違いを出すのは難しい」と頭を抱える。
政令市では新潟など計10市がマイナスに。新潟市では、15~24歳の転出が転入を上回っており、進学や就職を機に首都圏へ引っ越すケースが多いという。少子高齢化の進行も相まって、大都市でも本格的な人口減少社会に突入した形だ。
▽東京独り勝ち
安倍政権は対策の柱として、東京一極集中是正を掲げる。だが、東京都は全国トップの7万2千人増で、交通アクセスが良い周辺都市も含め「東京独り勝ち」が続く。
つくばエクスプレスで東京・秋葉原まで約30分の千葉県流山市の「流山おおたかの森」駅。朝のラッシュで混雑する構内で、都内が勤務先の女性(37)は「子どもが2人いるが、小児科はいつもいっぱいで予約しないと診てもらえない」と苦笑いを浮かべた。
人口18万人の流山市は、05年のつくばエクスプレス開業前に比べて3万人増えた。市の担当者は「子育て支援を拡充するなど、共働き家庭が暮らしやすくする政策に取り組んだ成果が出ている」と話す。
総務省の担当者は「職場までの交通アクセスが良く、不動産も手頃な都市で人口が増えている」とみる。
▽受け入れ拡大
一方、日本に居住する外国人の人口は、長崎県を除く46都道府県でプラスとなった。留学生や技能実習生のほか、リゾート施設に中長期的に滞在する外国人も多くなっているという。増加率が16・64%と最も高かった熊本県は、大規模農業に従事する実習生らを積極的に呼び込んだことが主な要因だ。
政府は、地方でも深刻化する人手不足対策として外国人の新たな在留資格創設を今年の骨太方針に盛り込んだ。20年東京五輪・パラリンピックに向けて、外国人の増加は続くとみられている。
だが、慶応大の中島隆信(なかじま・たかのぶ)教授(経済学)は「東南アジア諸国も出生率が低下しており、実習生を送るほどの豊富な労働力をいつまでも保てない。中国などと労働者の奪い合いになる可能性もある」と指摘。「国内で少子高齢化が進み、労働力が確保できなくなった理由を十分に検証しなければ、根本的な問題は解決しない」と強調した。