進行膵がんに新免疫療法 富山大附属病院が8月にも治験
2018年7月23日 (月)配信北日本新聞
標準的な抗がん剤治療が効かなくなった進行膵臓(すいぞう)がんの患者を対象とした新しい免疫療法の治験が、富山大附属病院(富山市杉谷)で始まる。がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを高める方法で、新たな治療の切り札となることが期待されている。 (社会部・荒木佑子)
和歌山県立医科大が中心となって行う治験で、富山大附属病院を含め全国18の医療機関の参加を予定する。北陸は富山大のみ。
この療法では、患者の血液成分から、免疫細胞にがんを攻撃させる働きを持つ「樹状細胞」を培養し、攻撃力を高めてから体内へ戻す。
具体的には、まず、成分採血で得た患者の血液細胞から樹状細胞を培養し、がん細胞の目印となるタンパク質の断片「WT1ペプチド」を振り掛ける。目印を記憶した樹状細胞をワクチンとして体内に投与すると、免疫細胞「キラーT細胞」が活性化し、がん細胞をピンポイントで攻撃する。
薬剤や放射線などをがん細胞に作用させる従来の療法と異なり、患者本人の免疫細胞を作用させるのが特徴で、副作用が出にくいという。
治験は早ければ8月中にも始まる予定で、第二外科の藤井努教授(49)は「膵臓がんはまだまだ治りにくい病気で、治療の選択肢を増やす必要がある。この免疫療法の開発で、少しでも治る患者さんが増えることを切望する」と話している。
■早期発見にも力
膵臓がんは初期に症状が出にくく、進行が早いため、発見時には既に転移して手術ができないことも多い。国立がん研究センターによると、5年生存率は7~8%で、あらゆるがんの中で最も低い。
ただし、がんが1センチ以下の段階で発見されると、5年生存率は約80%に高まる。富山大附属病院は、進行膵臓がんの治療だけでなく、1センチ以下でも発見可能な検査機器「超音波内視鏡」を用いた早期診断にも力を入れている。
第三内科には6月、超音波内視鏡による膵臓・胆道疾患の診断治療が専門の安田一朗教授(52)が、帝京大附属溝口病院(神奈川)から着任した。安田教授は、超音波内視鏡で病変を観察しながら針で細胞を取る検査(2010年に保険適用)が一番の専門分野。02年にドイツに渡って300例の実績を積み、日本での導入を推し進めた。海外における国際学会での技術指導経験は60回以上に上る。安田教授は「早期のがんをたくさん見つけ、富山県の膵臓がんの予後を良くしていきたい」と話す。
富山大附属病院には昨年4月に第二外科に藤井教授が着任し、内科・外科の両方に膵臓の専門家がそろった。藤井教授は「富山大を日本だけでなく世界の膵臓疾患・膵臓がん治療の拠点にしたい」と語った。膵臓がんの診断や治療に関する市民公開講座の開催も計画している。
2018年7月23日 (月)配信北日本新聞
標準的な抗がん剤治療が効かなくなった進行膵臓(すいぞう)がんの患者を対象とした新しい免疫療法の治験が、富山大附属病院(富山市杉谷)で始まる。がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを高める方法で、新たな治療の切り札となることが期待されている。 (社会部・荒木佑子)
和歌山県立医科大が中心となって行う治験で、富山大附属病院を含め全国18の医療機関の参加を予定する。北陸は富山大のみ。
この療法では、患者の血液成分から、免疫細胞にがんを攻撃させる働きを持つ「樹状細胞」を培養し、攻撃力を高めてから体内へ戻す。
具体的には、まず、成分採血で得た患者の血液細胞から樹状細胞を培養し、がん細胞の目印となるタンパク質の断片「WT1ペプチド」を振り掛ける。目印を記憶した樹状細胞をワクチンとして体内に投与すると、免疫細胞「キラーT細胞」が活性化し、がん細胞をピンポイントで攻撃する。
薬剤や放射線などをがん細胞に作用させる従来の療法と異なり、患者本人の免疫細胞を作用させるのが特徴で、副作用が出にくいという。
治験は早ければ8月中にも始まる予定で、第二外科の藤井努教授(49)は「膵臓がんはまだまだ治りにくい病気で、治療の選択肢を増やす必要がある。この免疫療法の開発で、少しでも治る患者さんが増えることを切望する」と話している。
■早期発見にも力
膵臓がんは初期に症状が出にくく、進行が早いため、発見時には既に転移して手術ができないことも多い。国立がん研究センターによると、5年生存率は7~8%で、あらゆるがんの中で最も低い。
ただし、がんが1センチ以下の段階で発見されると、5年生存率は約80%に高まる。富山大附属病院は、進行膵臓がんの治療だけでなく、1センチ以下でも発見可能な検査機器「超音波内視鏡」を用いた早期診断にも力を入れている。
第三内科には6月、超音波内視鏡による膵臓・胆道疾患の診断治療が専門の安田一朗教授(52)が、帝京大附属溝口病院(神奈川)から着任した。安田教授は、超音波内視鏡で病変を観察しながら針で細胞を取る検査(2010年に保険適用)が一番の専門分野。02年にドイツに渡って300例の実績を積み、日本での導入を推し進めた。海外における国際学会での技術指導経験は60回以上に上る。安田教授は「早期のがんをたくさん見つけ、富山県の膵臓がんの予後を良くしていきたい」と話す。
富山大附属病院には昨年4月に第二外科に藤井教授が着任し、内科・外科の両方に膵臓の専門家がそろった。藤井教授は「富山大を日本だけでなく世界の膵臓疾患・膵臓がん治療の拠点にしたい」と語った。膵臓がんの診断や治療に関する市民公開講座の開催も計画している。