Dr.北村が語る現代思春期:恋愛に消極的な若者 厳しい懐事情も影響か
2018年7月17日 (火)配信毎日新聞社
クリニックには日々の出来事を思う存分話してくれる患者が受診していますので、ネタに困ることはありません。「面白い話題ない?」と迫ると、「また、先生の連載記事のネタ探しですか」と返されるのが常です。そんな中、最近では、恋愛の楽しさを喜々として語る女性との出会いがとんと少なくなっています。
「草食」、今では「絶食」とまで言われている日本男子のこと。「街コンに出かけていったのに、まともに話せる男性がいない。帰り際にメルアドの交換でもするのかなあと思いきや、『今日はありがとう。楽しかった』と。何しに来ているのか」と。そんな話を聞きながら、「あなたに魅力を感じなかっただけ」と言いたい気持ちをぐっと抑えながら、「いい男がいたら食っておしまい」と口にしていました。「どうしたら、いい人をゲットできますか」との質問もよく受けるのですが、僕は決まって、「大切なことは人探しではなくて、自分磨きだよ」と答えることにしています。魅力ある自分が作られていけば周囲の人が放っておくはずがないからです。
日本家族計画協会が2016年に実施した「第8回男女の生活と意識に関する調査」のうち、「結婚しない、セックスしない若者たち」の実態報告が国内外の関心を集めています。18歳から34歳の未婚男女を抽出して特徴を探った結果、男性の42・0%、女性の46・0%にセックス経験がないというのですから驚きです。中高生の頃から激しい性欲に襲われ悶々(もんもん)とした日々を送っていた自身を振り返るにつけ、このような日本の現実を理解できないでいます。
異性と関わることを面倒だと感じている、セックスに関心がないというのは、セックス経験のない男女としてはありふれた回答であるとしても、僕が最も注目したのは「たばこを吸わない」「アルコールを飲まない」が目立ったことです。拙著に『セックス嫌いな若者たち』(メディアファクトリー新書)があります。執筆に際して「草食男子」10人近くにインタビューした際にも禁酒・禁煙の声をよく聞きましたが、その理由は健康意識の高まりというよりも、経済的な余裕がないことと関係していました。サラリーマンの平均年収が減少する一方、携帯電話やスマートフォンの維持費がかかりすぎて、恋愛どころではないのです。
少子化の原因には未婚の増加が大きく影響していると言われています。若者の雇用の確保と経済的安定が図れないと恋愛どころか結婚も、そして子どもを持つことだって夢のまた夢なのかもしれません。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)
2018年7月17日 (火)配信毎日新聞社
クリニックには日々の出来事を思う存分話してくれる患者が受診していますので、ネタに困ることはありません。「面白い話題ない?」と迫ると、「また、先生の連載記事のネタ探しですか」と返されるのが常です。そんな中、最近では、恋愛の楽しさを喜々として語る女性との出会いがとんと少なくなっています。
「草食」、今では「絶食」とまで言われている日本男子のこと。「街コンに出かけていったのに、まともに話せる男性がいない。帰り際にメルアドの交換でもするのかなあと思いきや、『今日はありがとう。楽しかった』と。何しに来ているのか」と。そんな話を聞きながら、「あなたに魅力を感じなかっただけ」と言いたい気持ちをぐっと抑えながら、「いい男がいたら食っておしまい」と口にしていました。「どうしたら、いい人をゲットできますか」との質問もよく受けるのですが、僕は決まって、「大切なことは人探しではなくて、自分磨きだよ」と答えることにしています。魅力ある自分が作られていけば周囲の人が放っておくはずがないからです。
日本家族計画協会が2016年に実施した「第8回男女の生活と意識に関する調査」のうち、「結婚しない、セックスしない若者たち」の実態報告が国内外の関心を集めています。18歳から34歳の未婚男女を抽出して特徴を探った結果、男性の42・0%、女性の46・0%にセックス経験がないというのですから驚きです。中高生の頃から激しい性欲に襲われ悶々(もんもん)とした日々を送っていた自身を振り返るにつけ、このような日本の現実を理解できないでいます。
異性と関わることを面倒だと感じている、セックスに関心がないというのは、セックス経験のない男女としてはありふれた回答であるとしても、僕が最も注目したのは「たばこを吸わない」「アルコールを飲まない」が目立ったことです。拙著に『セックス嫌いな若者たち』(メディアファクトリー新書)があります。執筆に際して「草食男子」10人近くにインタビューした際にも禁酒・禁煙の声をよく聞きましたが、その理由は健康意識の高まりというよりも、経済的な余裕がないことと関係していました。サラリーマンの平均年収が減少する一方、携帯電話やスマートフォンの維持費がかかりすぎて、恋愛どころではないのです。
少子化の原因には未婚の増加が大きく影響していると言われています。若者の雇用の確保と経済的安定が図れないと恋愛どころか結婚も、そして子どもを持つことだって夢のまた夢なのかもしれません。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)