鴎外全集未収録の文章発見 島根、医師の心構え説く
2020年1月6日 (月)配信共同通信社
軍医でもあった文豪、森鴎外(1862~1922年)が医師の心構えを説いた文章が、島根県津和野町にある森鴎外記念館の所蔵資料から新たに見つかった。同館によると、鴎外の作品をまとめた全集には収録されていないという。
医療機器に頼らず目や耳で丁寧に観察する重要性を説いており、同館の山崎一穎(やまざき・かずひで)館長は「鴎外が医師の心構えを直接的に説いた文献は他になく、貴重な資料だ」としている。同館は3月発行の機関誌で特集を組み、全文や現代語訳を解説付きで掲載する予定。
鴎外は津和野町出身。今回発見された文章は、同館が2017年に埼玉県の収集家男性から購入した鴎外に関する資料の中にあった。約400字の漢文で、1891(明治24)年に出版された医学書の序文として寄稿された。鴎外が医学を学んだドイツから帰国した直後に書いたとみられる。
「器械は五官之(の)及ばざるを扶(たす)け、以(もっ)て功を成すのみならん」として、医療の近代化に伴い聴診器など機器に頼る傾向を戒めている。
一方「軽躁(そう)戒むべきなり。狐疑(こぎ)も亦(ま)た戒むべきなり」として、軽はずみな医療行為、疑ってちゅうちょする消極性いずれも非難されるべきだと指摘。治療の適切なタイミングを見極めるよう求めている。最後に中国の歴史上の名医に触れ、患者が医師を信頼することの大切さも訴えている。
山崎館長は「鴎外は今で言う研究医に近く、現場の臨床医学について語っているのは珍しい」と話している。同館は3月発行の機関誌の注文を電話0856(72)3210で受け付けている。