新型コロナ 発生1週間で100人 ショーパブクラスター拡大なぜ 鹿児島市、県の感染情報で読み解く
2020年7月10日 (金)配信南日本新聞
鹿児島市天文館のショーパブ「NEW おだまLee男爵」で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が確認されて8日で1週間。クラスター関連の感染者数は日を追うごとに膨れ上がり、県内の累計は100人と極めて大規模になった。鹿児島市が感染者の相次ぐ飲食店名を新たに公表して注意を呼び掛けるなど、まだ警戒を怠れない。今回のクラスターはどんな特徴があり、どう発生、拡大したのか。県と市が公表した感染者の情報から読み解く。
感染者の居住地は同市など県本土の10市2町に及ぶ。大阪府など県外で確認された人も複数いる。天文館で長年営業する同店は県民に広く知られ、県外客も多い人気店。それだけに影響も大きかった。
感染症に詳しい鹿児島大学大学院の西順一郎教授(微生物学)は「通常のバーやクラブで考えられる規模より極めて大きい。大きなクラスターとなった大阪市のライブハウスのようだ」と国内各地に広がった事例に重ねる。
■不十分な換気
踊りや会話で客を楽しませる店内は、従業員と客との距離が近く、歌や大きな笑い声も起こる。鹿児島市が「30~40人が訪れ、雨で換気のドアを閉めていた」と説明する6月27日に来店した客の感染者は31人に上る。
西教授は「ものすごい感染率。歌や張り上げた声で細かい飛沫が飛び交い、換気が不十分な状態が長時間続き、悪条件が重なった」と分析する。
最初に感染が確認された店の女性が27日に発症した点にも注目。新型コロナは、発症2日前からウイルス量が増え感染しやすいとされる。26日の客のうち18人が感染しているのも、コロナの特徴と合致する。感染した客の来店日は17~29日に及び、西教授は「17日から感染者が店内にいたことになる」と最初の女性の前にも発症者がいたと指摘した。
■2、3次感染も
日ごとの感染者判明数は7月4日の31人をピークに減少している。一方で6日以降、感染した従業員や客と店舗外で接触した2次感染者や、その接触者への3次感染が増えている。
県、市の発表では、多くは症状が軽く、半数近くは無症状。これもコロナの特徴だ。今回のケースは20~40代の比較的若い世代が多い。無症状ですむ人がいる一方、発症から1週間ほどで急激に悪化する人もいるので注意が必要という。
西教授は「まだ帰国者・接触者相談センターに連絡していない人もいると思われ、このまま減少するとは限らない。2次、3次感染者からの波及にも警戒が必要」と話す。封じ込める手段は濃厚接触者を早めに検査し広がりを確認することだという。
2日以降、クラスター以外の感染確認数も増え11人に上る。「クラスター発生で相談と検査が増えたことも一因だが、症状がある人は優先的に検査すべきだ。経路不明者の近くには隠れたクラスターがある可能性がある」と話した。