PCR陽性のまま退院 和歌山県「国の基準に疑念」
和歌山県は2日、新型コロナウイルスに感染した岩出保健所管内の20代男性が、退院前のPCR検査で陽性が確認された中で退院したと発表した。「無症状者は最初の検体採取から10日で退院」とする国の基準と本人の希望に沿った。ただ、県福祉保健部の野尻孝子技監は陽性でも退院できる基準について「本当に正しいかは議論の余地があり、問題提起をしていく必要がある」とし、国に説明を求めていく考えを示した。
男性は、大阪府で感染が確認された濃厚接触者として6月22日に検体を採取され23日に感染が判明した。
県は退院予定前日の1日、二つの検体を検査したところ、唾液は陰性、鼻咽頭は陽性となった。
これまでの国の基準では、症状が治まってから一定時間空けて2回検査し、続けて陰性となれば退院できるとしていた。国は段階的に基準を見直し、6月中旬からは、検査しない場合でも、有症状者は発症後10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過したとき▽無症状者は検体採取日から10日間経過したとき、退院できるとした。海外の研究で、一定期間経過すれば感染リスクが低くなることが分かったことなどによる。
県は、国の退院基準では入院期間が短く、患者が陽性のまま退院することが想定されるため、少なくとも1回は検査し、その後の感染予防対策につなげることに決めている。
検査結果が陽性のまま退院するのは県内では初めて。野尻技監は「感染症法上の退院基準なので、従うのは致し方ない」とした上で、今回のケースについては「ウイルスは極めて少なくなったと聞いていて、クラスターの原因になることは、ほぼないのではないか。2週間の自宅待機もお願いしているので、地域への感染拡大は考えにくい」と話した。
ただ、国の退院基準については「(示された期間が経過すれば)感染性は全くなくなるというわけではないのでは、と疑問が残る。(国には)科学的に根拠を持って示してほしい」とした。例えば、検査で陽性となれば、地域の状況に応じ、引き続き入院を求めることができるなど、見直しを要望していきたいという。