https://gemmed.ghc-j.com/?p=33302
新型コロナウイルス感染症、高齢者やLDH高値者で生存率低く、出血合併症に留意したECMO早期実施が重要
まずECMOの治療状況を見ると、3月30日までに40名の患者に実施されており、「ECMOから離脱し、回復した方」が19名(ECMO治療者の47.5%)、「治療継続中の方」が15名(同37.5%)、残念ながら「お亡くなりになった方」が6名(同15%)となっています。今後も継続調査・分析が待たれます。
(肝障害でLDHが最も高値になるのは、ウイルスが原因でおこる急性肝炎で、急性期には基準値の4~5倍に上昇します。アルコール性肝炎、脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変では、2倍以内の上昇が一般的です。
LDHは、肝細胞のほか心筋(心臓の筋肉)、骨格筋、血球など全身のあらゆる細胞に含まれており、それぞれの細胞の障害(破壊)で値が上昇します。
急性心筋梗塞(こうそく)では、LDHは発症6~10時間で上昇し始め、24~60時間で極値、正常の4~5倍の値になります。この病気は、発症1週間が重要な時期のため、症状が安定するまでLDHをはじめとする血液検査を繰り返し行います。
また、LDHだけが異常に高値の場合には、悪性腫瘍の存在が疑われます。がん細胞は多くのエネルギーを必要としますので、LDHが多量に出てくるためです。https://www.qlife.jp/dictionary/exam/item/i_08200/ )
また「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床的特徴」では、ECMO治療を行った重症者32名について分析を行っています(日本集中治療医学会のサイトはこちら)。
まず患者の属性としては、▼重症者の年齢は58-73歳で、平均69歳と「高齢者が多い」▼重症者の性別をみると81%が男性である―ことが分かりました。さらなるデータ集積が待たれますが、「高齢・男性」において重症化リスクが高いことが伺われます(後述するように高齢者では生存率も低い可能性がある)。
また胸部のCT所見からは、▼胸膜直下の「スリガラス影」が特徴的である(86%の患者に見られる)▼「浸潤影」は患者の32%にとどまる―ことが分かりました。「スリガラス影」の有無に特に留意する必要がありそうです。
次に患者に実施した呼吸管理のデータを見ると、次のような点が明らかになってきています。関係学会では「重症化のスピードが速い」「コンプラインが保たれることから、ECMO開始タイミングを逸しないことが重要である」「出血合併症の発生に注意が必要である」との見解を示しています。
▽気管挿管からECMOに⾄るまでの重症化速度が速い(気管挿管からECMO実施までの平均期間は2日間)
▽低酸素⾎症のわりにコンプライアンスは保たれる
▽ECMO機種・カニューラは⻑期耐久性に優れたタイプが使⽤されている
▽出⾎合併症の頻度が通常より⾼い(出血合併症はECMO実施患者の50%に、血栓合併症は同じく15%に発生)
また、投与された薬剤については、次のような状況です。薬剤の選択は、HIV感染症治療薬「カレトラ」以外は、施設によってさまざまのようです。
▽HIV感染症治療薬の「カレトラ」(成分名:ロピナビル リトナビル):95%の患者に投与
▽新型・再興型インフルエンザウイルス感染症治療薬の「アビガン」(成分名:ファビピラビル):36%の患者に投与
▽抗マラリア薬の「リン酸クロロキン」:5%の患者に投与
▽気管支喘息に用いる「オルベスコ」(成分名:シクレソニド):43%の患者に投与
さらに、治療状況・成績を見てみると、次のような結果が示されています。
▽ECMO使⽤⽇数は9日から21日で、平均は12日
▽ECMOからの⽣存離脱率は67%
▽⼈⼯呼吸の⽇数は14日から31日で、平均は20日
▽⼈⼯呼吸からの⽣存離脱率は44%
▽⼊院⽇数は21日から38日で、平均29日
▽死亡率は8%
まだ限られたデータですが、関係学会では▼ECMO⽣存離脱率は通常のECMO成績と同等である▼⼈⼯呼吸器から離脱できた患者も相当程度おられる▼⼊院期間は⻑期間となる―とコメントしています。
体外式膜型人工肺(たいがいしきまくがたじんこうはい、英: Extracorporeal membrane oxygenation, ECMO, エクモ)は、重症呼吸不全患者または重症心不全患者に対して(時に心肺停止状態の蘇生手段として)行われる生命維持法である。