看護師確保、設備に難題 医療難民の受け皿なるか 大阪府の「野戦病院」構想
新型コロナウイルス第5波の影響で医療逼迫(ひっぱく)が続く大阪府の吉村洋文(よしむら・ひろふみ)知事が「野戦病院」と言われる大規模な臨時医療施設の整備を急いでいる。大阪市内の大型展示場「インテックス大阪」に千人分の病床を設け、軽症・中等症患者を中心に受け入れる構想で、医療難民の受け皿を狙う。吉村氏は9月中の開設を目指すが、看護師確保や生活設備の整備など、難題が立ちふさがる。
▽補完機能
大阪では9月1日に初めて新規感染者数が3千人を超え、軽症・中等症病床は5日時点で、確保した約2770床の8割以上が埋まる。府は8月中旬から一時、宿泊療養の対象を40歳以上に限定。自宅療養者は約1万7千人に膨らんだ。
新型コロナ対応の改正特別措置法は、医療機関が不足し医療の提供に支障が生じる場合に、知事の権限で臨時医療施設を開設できると規定。吉村氏は「自宅で亡くなったり、重症化したりするのを防ぐため、病院や宿泊施設の補完機能として走りだしたい」と意義を強調する。
構想はまだ生煮えの段階だが、千床のうち200床は中等症向けに充てる一方、感染者の自主隔離場所として柔軟に利用できるようにすることも検討している。
▽ハードル
ただネックとなるのは看護師の確保だ。施設運営の監修は大阪大病院が担うが、看護人材のめどは立っていない。現時点では必要人数も不透明で、吉村氏も「一番のハードルだ」と認めている。府看護協会の高橋弘枝(たかはし・ひろえ)会長は「野戦病院を設置するなら、少なくとも救急搬送まで持ちこたえられるだけの機材や人材が必要だ」と語った。
元は展示場のため、トイレは共用で入浴設備もない。簡易シャワーを設置しても療養者が多くなれば使用が制約される恐れがある。パーティションなどで区切っても、物音でプライバシー確保も難しい。自由な外出は許されずストレスがたまりやすい状況で、ある府幹部は「若い人ほど嫌がるのではないか」と危ぶむ。
NPO法人「災害人道医療支援会(HuMA)」の理事で、大阪市内の病院でコロナ対応に当たる夏川知輝(なつかわ・ともあき)医師は「災害時の避難所と同じで生活のための設備が不足するし、治安維持も難しい」と指摘。「宿泊療養施設を増やしたり、倒産した病院を借り上げたりして、生活のための設備が整った施設に医療従事者を派遣する形で活用するべきではないか」と話した。