「アベノマスク」今年度内に廃棄、岸田首相が会見
岸田文雄首相は12月21日、記者会見を行い「アベノマスク」と呼ばれる布製マスクを今年度末をめどに廃棄する考えを示した。オミクロン株対策では、オミクロン株陽性者の濃厚接触者に対しては、自宅ではなく、14日間の宿泊施設での待機を要請するとした。
補正予算などが成立した16日間の臨時国会が閉会したことを受けての会見。冒頭で補正予算について触れた後、「政府が布製マスクを全国民に配布するとしたことで、その後マスクの製造、流通が回復し、今ではマスクの不足に対する心配は完全に払拭されるなど所期の目的は達成された」と説明。現在は5億枚超の高性能マスクを備蓄しているとし、「財政資金、効率化の観点から、布製マスクの政府の在庫について、御希望の方に配布し、有効活用を図った上で、年度内をめどに廃棄を行うよう指示した」と話した。
政府の布製マスクは2020年4月、安倍晋三元首相がマスク品薄状況の改善を目指して全世帯配布を宣言したことから「アベノマスク」とも呼ばれている。配布の遅れや不良品への批判が相次ぎ、大量の在庫も発生。岸田首相は同日の参院本会議で2020年4月から5月にかけて厚生労働省が7100万枚について検品したところ、15%にあたる1100万枚が不良品であることを明らかにしていた。多額の保管費がかかることも問題視されていた。
続いて、「12月6日の所信表明後に進展のあった7項目」について説明。新型コロナ関連の医療政策では、(1)水際対策の強化、(2)国内における感染封じ込め対策の強化、(3)予防・検査・早期治療のための包括強化策――の3項目を挙げた。
11月29日から1カ月をめどとしていた水際対策の強化では、オミクロン株の「科学的な評価がいまだ確立していない」として当面の間、延長すると説明。全ての国内感染者については、オミクロン株の検査を行うとし、オミクロン株の濃厚接触者にも自宅待機要請ではなく14日間の宿泊施設での待機を要請するとした。
3回目のワクチン接種については、医療従事者と65歳以上の高齢者の約3100万人を対象に前倒しで行う(『医療者や高齢者施設入所者、3回目接種「6カ月以降」に前倒し』を参照)。経口治療薬では、薬事承認を得次第、メルク社の治療薬を年内から160万回分、来年早い時期からファイザー社の治療薬200万回分を提供する。今夏の第5波では新規陽性者が累積で90万人程度、そのうち重症化リスク保有者は20万人程度とされていることから、「今夏の2倍、かつ中期的な感染拡大が続いた場合でも、軽症者を含め、重症化リスクを有する方全てに対応するのに十分な量」だと訴えた。
また、ワクチン未接種者を対象に、年内から予約不要の無料検査を全ての都道府県で開始する。
そのほかには、(4)新型コロナでの生活困窮者への支援、(5)新しい資本主義、(6)外交・安全保障、(7)憲法改正―について説明した。
質疑応答では、新型コロナ対策以外がほとんどだった。「外国人、留学生は1年8カ月前からほとんど入国できてない。彼らにとってはもう限界。例えば施設で1カ月隔離、ワクチンパスポート、毎日の検査など厳しい条件をつけて、入国を認めないのか」と問われると、「現状、まだまだ科学的に確認できていない状況であり、慎重の上にも慎重でなければならないということで、G7の中でも最も厳しい水際対策を用意させていただいている。現状はそういう方針を続けたいと考えている」と答えた。