米ニューヨーク州の成人869万825例のデータを用いて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン3種(ファイザー製BNT162b2、モデルナ製mRNA-1273およびジョンソン&ジョンソン製Ad26.COV2.S)の有効性を比較した。
2021年5月1日から9月3日までの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染および2021年5月1日から8月31日までのCOVID-19による入院に対して、それぞれのワクチンの有効性を評価した。
その結果、デルタ株が変異株の1.8%を占めた2021年5月1日の週のワクチン有効性中央値は、BNT162b2が91.3%、mRNA-1273が96.9%、Ad26.COV2が86.6%だった。全体の有効性中央値は93.4%だったが、デルタ株が占める割合が85.3%になった7月10日頃に73.5%に低下した。デルタ株が占める割合が99.6%に達した8月28日の週では74.2%だった。
18-64歳の成人のCOVID-19による入院に対する有効性は86%以上を維持し、時間的傾向を認めなかった。BNT162b2またはmRNA-1273を接種した65歳以上の成人では、5月から8月にかけてワクチンの有効性が低下し、BNT162b2では94.8%から88.6%に、mRNA-1273では97.1%から93.7%になった。Ad26.COV2.Sの有効性は他のワクチンよりも低く、経時的傾向はなかった。
看護師派遣、期限延長へ 3回目接種の打ち手確保
厚生労働省は8日、新型コロナウイルスのワクチン集団接種のため特例的に認めている看護師派遣の期限を、来年2月末から来年9月末まで延長する方針を固めた。3回目接種が始まり、打ち手を確保する必要があるため。
看護師派遣を巡っては安全性などの観点から医療人材が不足するへき地を除き、労働者派遣法で医療機関への派遣を原則禁止している。ただ、ワクチン接種には一時的に多くの看護師が必要となる。
全国知事会などが集団接種会場への派遣を求め、今年4月から自治体によるワクチン接種方法などの事前研修を条件に期間限定で認められた。当初は2回の接種で終わる想定だったため、来年2月末を期限としていた。
厚労省によると、今年9月末時点で、へき地を除く121市区町村のワクチン接種会場に約2万4千人の看護師が派遣された。
2千医療機関名公表 コロナ病床「見える化」で
厚生労働省は8日までに、新型コロナウイルス患者向け病床を確保している2286の医療機関名と、それぞれの病床数を初めて公表した。流行「第6波」に備えて医療提供体制を「見える化」し、感染拡大時に入院が必要な患者の受け入れを促す狙い。入院患者数も12月中に発表し、今後は病床数とともに1カ月ごとに情報を更新する。
厚労省のシステムを通じて1日時点の医療機関名と確保病床数を把握し、同省のホームページで一覧を公表した。自治体病院や、第6波を見据え国が病床数の上積みを要請した公的病院、自治体と患者受け入れで合意した民間病院などが掲載されており、病床数は計約3万9千。一方、未報告の医療機関が一部あるほか、緊急時に整備することが多い臨時医療施設は含めていない。
第5波ではコロナ用病床として申告されながら使用できないケースが問題となった。このため、政府は11月に決定した第6波対策の全体像で「医療体制を徹底的に見える化する」と明記。12月から医療機関別に病床の確保状況や使用率を公表し、感染拡大時の病床使用率を8割以上に引き上げる方針を掲げていた。
「開業医も後遺症対応を」 コロナ拡大で外来増、愛知
今夏の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、後遺症を訴える人が増えている。後遺症外来を開設する愛知医大メディカルクリニック(名古屋市)では診療枠を増やして対応するが、馬場研二(ばば・けんじ)クリニック長は「後遺症の症状や経過は少しずつ分かってきており、一般の開業医も相談窓口になって」と呼び掛ける。
11月中旬の午後、クリニックを愛知県日進市の女性会社員(45)が受診した。「食事の最初は味を感じるが、半分ぐらい食べたところで味がなくなってしまう」。9月上旬にコロナ陽性となり、肺炎と診断され入院、その後回復したが、嗅覚と味覚に異常があるという。
馬場さんは、女性が記入した症状の経過などの問診票や、通院する耳鼻科の処方薬を確認。一般的には時間とともに症状が治まることなどを説明し「回復する経過はさまざまだが、根気よく治療を続ければ大丈夫ですよ」と助言した。
後遺症外来を設置したのは今年4月。毎月50人ほどを診ていたが、夏の感染拡大後、10月は68人、11月は73人と増加した。10月までに受診した計313人のうち約47%が30代以下。受診者の半数近くが「倦怠(けんたい)感・疲労感・だるさ」を訴え「呼吸困難・息切れ」「嗅覚障害」も多い。
後遺症を疑い不安になったものの、どこに相談したらいいか分からず困っている人も少なくないとみられる。馬場さんは「国が作成した後遺症の診療手引きを参考に、適切なアドバイスができるかかりつけ医が増えてほしい」と話した。
指定宿泊施設確保で協力へ 愛知、オミクロン水際対策
新型コロナウイルス「オミクロン株」の水際対策を巡り、愛知県の大村秀章知事は8日の記者会見で、県が軽症者らの療養施設用に確保したホテルを、検疫所の指定宿泊施設用に国へ貸し出す方針を明らかにした。
大村氏によると、7日に厚生労働省から要請があり、8日に協力すると伝えた。県はホテル6カ所の計1628部屋を借り上げているが、7日時点での入所者は10人で、大量の空き部屋が生じている。
ワクチンの国内生産強化 政府、設備導入に補助金 新たな感染症に備え
経済産業省が、新型コロナウイルスの感染拡大で弱さが露呈したワクチンの国内生産体制を強化するため、企業への支援策を新たにまとめたことが8日分かった。通常は他の医薬品を生産し、感染症の流行時にワクチン製造に切り替えられる両用設備の導入を補助金で後押しする。輸入頼みの状況から脱却し、新型コロナの変異株や新たな感染症に備える。
ワクチン生産に向け、製薬会社が多額の投資をしても、感染症の収束時には設備が余剰となる恐れがある。このため経産省は、設備を平時にも有効活用できるようにして、企業のリスクを軽減することが必要だと判断した。
新たな支援策では、がん治療などで使われるバイオ医薬品とワクチン製造の両用化に必要な既存設備の改修や新規設備の導入について、費用の9割を補助する。パンデミック(世界的大流行)時には、ワクチン生産に切り替え、国内への優先供給に応じることを支援の要件とする方向だ。
岸田文雄首相は8日の国会答弁で、両用設備を整備し「今後脅威となり得る感染症への備えに万全を期す」と語った。
また、ワクチン製造に欠かせない製剤化や素材生産の設備も、大企業では導入費用の3分の2、中小企業では4分の3を補助する。経産省は支援を行うため、2021年度補正予算案に2274億円を計上した。
塩野義製薬は「企業の負担軽減のために平時と非常時を意識した新しい政策で、国産による安定供給の観点からも前向きな姿勢は評価できる」とコメントした。
日本は公衆衛生の向上に伴う関心の低下などから、これまでワクチンの開発や生産が後手に回った。しかし、コロナ禍でワクチンを含めた医療物資の海外依存が浮き彫りとなり、安定調達の体制整備が安全保障上、急務となっている。
量子、再生医療へ投資強化 日立「世界変える可能性」
日立製作所の小島啓二(こじま・けいじ)社長(65)は8日、共同通信などのインタビューに応じ、研究開発で重視する領域について、クリーンエネルギーの「水素」、再生医療などの「細胞」、次世代コンピューターに使われる「量子」の3分野を挙げた。「世界を大きく変える可能性がある」と述べ、関連投資を強化する意向を示した。
日立は2022年度から3年間で研究開発費として計1兆5千億円を充てる方針。大部分は二酸化炭素(CO2)の削減などの環境関連技術に投資しつつも「破壊的なイノベーション(技術革新)」の創出が期待される分野にも力を入れる考えだ。
電機メーカーでは、東芝や米ゼネラル・エレクトリック(GE)が会社を分割し、事業ごとに専門的な経営を目指す動きが相次いだ。これに対し「日立にとって大事なのは事業を通じた社会課題の解決だ。そのために必要な能力はそろえていく」と説明。グループを含む幅広い事業の組み合わせで、顧客の要望に応えていく姿勢を強調した。
GEとの共同出資会社がカナダで受注に成功した次世代原発の小規模原子炉「小型モジュール炉(SMR)」については、廃棄物処理の課題などが残っているとして「(日立主導では)国内外問わず、建設には関わらない」と語った。
見込み年収で教育資金融資 埼玉りそな、医療志望者へ
埼玉りそな銀行の福岡聡(ふくおか・さとし)社長が8日までに共同通信のインタビューに応じ、医療や介護の資格を取るため進学する学生向けの新たな教育ローンを始めると明らかにした。資格や免許取得後の見込み年収を基に審査する仕組みで、銀行としては珍しい試みとしている。
福岡社長によると、医師や看護師、保健師、助産師、介護福祉士といった国家資格や免許を取得できる学校に在学中か進学予定者が対象で、居住地か通学先が埼玉りそな銀行の営業エリア内に限る。未成年者は200万円、成人は400万円を上限に融資し、入学金や授業料、アパートの敷金などに充ててもらう。
親権者や収入のある社会人を対象とした既存の教育ローンと異なり、未成年でも高卒なら本人名義で申し込める。学業専念のため離職し、定期収入を失った社会人も申し込み可能。取り扱いは10日から。
福岡社長は、人口10万人当たりの医師、看護師、助産師の数がそれぞれ全国最下位の埼玉県の現状に「人材不足の解消に向け、志望者を応援したい」と危機感を示し、「金銭的な理由で教育の機会が閉ざされては、医療体制を強化できない。学び直しのニーズも高まっている」と指摘した。
GoTo、春休みは対象外 来年の再開後、観光庁
観光庁は8日、観光支援事業「Go To トラベル」を来年再開した場合、春休み期間は割引対象外とする方針を明らかにした。3月下旬~4月上旬を想定しており、具体的な除外日は今後、調整する。政府は早ければ1月下旬~2月上旬の事業再開を目指しているが、春休みは割引がなくても旅行需要が見込めると判断した。
政府は年末年始の新型コロナウイルス感染状況を見極め、再開時期を決める。斉藤鉄夫国土交通相は、新変異株「オミクロン株」の影響も注視して判断する考えを示している。
再開後のトラベル事業は旅行代金の割引率を30%とし、割引額の上限は最大1万円とする。旅先で使える地域共通クーポンは定額化し、平日3千円、休日千円。ワクチン接種済証や、検査の陰性証明の提示が利用条件となる。
4月下旬からの大型連休開始前まで実施し、連休中は停止、その後は実施主体を都道府県に切り替えて夏休み前まで行う予定。
オミクロン株、再感染リスク高いが症状は軽度か WHO見解
【AFP=時事】世界保健機関(WHO)は8日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」について、感染歴のある人が再感染するリスクが従来株に比べ高いことが初期データから示されているが、従来株より症状は軽い可能性があるとの見解を示した。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は記者会見で、「南アフリカからの新たなデータは、オミクロンでは再感染リスクが増加していることを示唆している」と説明。一方で、「オミクロンはデルタより症状が軽いという証拠もある」とした。
だが、結論を出すにはさらなるデータが必要であることを強調し、オミクロン株の特性を解明するため監視体制を強化するよう各国に要請。「現段階での油断は命取りになる」とし、オミクロン株の症状が軽度であることが判明したとしても、警戒を怠らないよう警告した。
WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン(Michael Ryan)氏も、現在のデータからは、オミクロン株が「おそらくデルタ株よりも効率的に伝染している」ことが示されていると指摘。たとえオミクロン株が従来株に比べ危険性が低いことが判明しても、感染拡大ペースが速ければ、発症者が増えて医療機関に負担がかかり、「より多くの人が死ぬ」恐れがあると述べた。
WHOは、一部データで示されているようにワクチンの対オミクロン株効果が低かったとしても、重症化予防の効果は高いことが期待できると指摘。ワクチン接種の重要性を強調した。
【翻訳編集】 AFPBB News
オミクロン株で偽メール 厚労省装い、情報流出恐れ
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への対応と偽ってコンピューターウイルスに感染させようとするメールが国内で確認されたことが9日、セキュリティー企業「チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ」の調査で分かった。差出人は厚生労働省などを名乗っており同社は個人情報が盗まれる恐れがあるとして注意を呼び掛けている。
同社によると、メールのタイトルには日本語で「【緊急】新型コロナの変種のため15日以内の個人情報を報告してください」と記載されていた。
文中には、個人情報を入力するためにエクセル形式のファイルをダウンロードするよう求めるリンクが貼り付けられていた。実際にアクセスするとウイルスに感染する。12月に入ってから同様の偽メールが数種類見つかっているが被害は確認されていないという。
文末には厚労省の住所やホームページアドレス、電話番号も記載。タイトルの「緊急」の字体が崩れていたほか、一部不自然な文章もあった。
厚労省は「本人に事前確認をせずにメールで個人情報の報告を求めることはない」としている。
ワクチン供給前倒しへ交渉 首相、米ファイザー社と 3回目接種、参院代表質問
岸田文雄首相は9日の参院本会議での代表質問で、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を巡り、米ファイザー社との供給契約に関し「スケジュールの前倒しについて交渉を進めている」と述べた。新たな変異株「オミクロン株」への対応について、空港検疫でのPCR検査拡大には慎重な考えを示した。「大量の検査結果の判明まで待機時間を短くする必要がある。抗原定量検査が現時点では最も適している」と語った。
立憲民主党の小西洋之氏は、弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」が集団的自衛権行使の際に使用できるか質問。首相は「個別の事態における対応については、憲法および安全保障関連法を含む関連法令に従って判断する」と述べるにとどめた。
小西氏は、国会議員に支給される「文書通信交通滞在費」について、日割り支給への変更に加えて使途公開が必要だとして、実現に向けたリーダーシップ発揮を首相に迫った。首相は「各党に議論いただき、合意を得る努力を重ねていただく必要がある」と改めて語った。
首相は経済政策に関し、賃上げ税制の強化を進めると強調。企業や富裕層への課税強化に対する認識を問われ「経済社会構造の変化も踏まえながら、引き続き総合的に検討する」とした。世界保健機関(WHO)総会への台湾のオブザーバー参加に関し、関係国と連携してWHOに働き掛ける考えも示した。
自民党の有村治子氏は、災害救援活動や国防の重要性を考慮し、自衛隊員にコロナワクチンを優先接種する仕組みを整えるべきだと指摘した。首相は「総合的に判断する」と答えた。
首相の所信表明演説に対する各党代表質問は、午後は衆院で行われる。
「ファクターX」日本人特有の未知の要因、対コロナ防御力解明につながる可能性
日本人の約6割にある白血球の型「HLA―A24」を持つ人は、風邪の原因となる季節性コロナウイルスに対する免疫細胞が、新型コロナウイルスの感染細胞も攻撃するという実験結果を、理化学研究所のチームが発表した。英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに論文が掲載された。
理研の藤井真一郎チームリーダーらは、日本人に多いA24を持つ人で、ウイルスに感染した細胞を排除する免疫細胞「キラーT細胞」の働きを調べた。
その結果、この型を持つ人のキラーT細胞は、季節性コロナと新型コロナで、共通する部分の分子に反応することがわかった。キラーT細胞には、こうした特徴を記憶する働きがある。過去に季節性コロナに感染した人が、新型コロナに感染すると、体内で眠っていたキラーT細胞が速やかに増え、感染細胞を排除している可能性があるという。
日本は海外に比べて新型コロナの感染者や死者が少ないとされ、「ファクターX」と呼ばれる日本人特有の未知の要因が存在しているという指摘がある。藤井チームリーダーは「A24がファクターXの候補と考えられ、治療薬の開発などにつながるかもしれない」と話している。
河上裕・国際医療福祉大教授(免疫学)の話「季節性コロナに感染するとキラーT細胞が新型コロナに対抗し得ることを示した重要な研究だ。日本人の新型コロナウイルスに対する防御力の解明につながる可能性もある」