スギ花粉症「舌下免疫療法」の効果、遺伝子型で予測可能に 福井大など
福井大と筑波大などでつくる研究グループは五日、スギ花粉症の治療法「舌下免疫療法」の効果を患者ごとに判別できる遺伝子型を特定したと発表した。数千円程度の比較的安価な検査方法も確立し、臨床検査としての実用化を目指している。実現すれば、治療前に患者の血液や唾液から遺伝子型を調べることで、治療効果の出やすさを医師が説明できるようになる。
(水野志保)
研究を主導した福井大医学部の藤枝重治学部長と、解析を担当した木戸口正典特命助教が福井市の文京キャンパスで会見した。
舌下免疫療法はアレルギーの原因となる物質を含む錠剤を毎日舌の裏に投与する治療法で、二年以上続けることで七割以上の患者に効果がみられるが、残りの患者の効果は低い。これまでは治療効果を事前に予測する方法がなかった。
研究グループは、免疫反応に関わるHLA遺伝子に着目。遺伝子型に個人差があるため、三重県の耳鼻咽喉科で舌下免疫療法を二年以上受けているスギ花粉症患者二百三人について、この遺伝子型と治療効果の関連性を調べた。その結果、スギによる花粉症で、舌下免疫療法が効きやすい患者と効きにくい患者を判別できる遺伝子型を発見した。
さらに、血液や唾液からDNAの特異的な塩基配列を調べることで、舌下免疫療法が効きにくい遺伝子型の有無を判別できる検査方法も確立。HLAの遺伝子型を調べるのに比べ、十分の一ほどの費用で済むという。
藤枝医学部長は「これまでは二年間治療をしてみると効果があるのかどうか分かる、としか言えなかった。だが、遺伝子型で効きやすさを説明できるようになり、患者は安心して治療を受けられるようになる」と研究の意義を強調。木戸口特命助教は、臨床検査で「必要のない遺伝子情報まで知る可能性がある」として、患者のカウンセリングを課題に挙げた。
研究成果は二月、欧州のアレルギー学会誌「アレルギー」の電子版に掲載された。福井大と筑波大は検査方法などの特許を出願している。
舌下免疫療法 アレルギーの原因となる物質を含む錠剤を毎日舌の裏に投与する治療法で、治療後も長期間にわたって効果が持続する。保険が適用され、五歳以上から治療が可能。