地方で顕著、都市部緩やか 過去の流行規模が影響か 新型コロナ感染再拡大
2022年4月11日 (月)配信共同通信社
新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向となり、専門家から「流行の第7波が始まった」との声が出始めた。ただ、感染者の増え方には地域差がある。東京や大阪など大都市は緩やかな一方で、3月後半以降、新規感染者数が9県で過去最多を更新するなど地方での増加が顕著だ。過去の流行規模が大きかった都市部では感染による免疫を持つ人の割合が高く、拡大が比較的抑えられている可能性がある。
▽最多更新9県
「これまでの流行規模が小さくて、感染のピークがそれほど高くなかったところほど、今の感染レベルが高くなっている」。6日に開かれた厚生労働省の専門家組織の会合後、記者会見した座長の脇田隆字(わきた・たかじ)国立感染症研究所長は各地の状況をこう分析した。
過去の流行では、大都市で感染者が増え、周辺地域に広がった。しかし現状は異なる。内閣官房などによると、7日までの1週間の新規感染者数は前週に比べて東京0・99倍、愛知1・00倍、大阪1・06倍とほぼ同じか微増。2月のピーク時に比べると半数以下の状態が続いている。
一方、地方では宮崎1・61倍、和歌山1・43倍、熊本1・31倍など増加が顕著な地域がある。共同通信の集計で3月20日以降に1日当たりの新規感染者数が過去最多を更新したのは青森、岩手、秋田、福島、新潟、長野、愛媛、宮崎、鹿児島の9県に上った。
▽世界でも
地域での感染の広がりは、人の接触の頻度や、変異株の種類、ワクチンや感染による免疫、免疫を獲得してからの経過時間などさまざまな要因が影響する。脇田座長は「ワクチンの3回目接種の進み具合は全国的に均一だが、これまでの感染状況による免疫の獲得に地域差があり、現在の状況が生まれているのではないか」との見方を示す。
世界でも似た傾向が見られる。累積感染者数で上位3位に入る米国、インド、ブラジルの感染状況が比較的落ち着いている一方で、韓国や香港、中国など以前は感染者数が少なかった東アジア地域で最近、かつてないほど感染が広がっている。
▽免疫
感染した人が増えると次の流行を抑えられるのか。専門家はフランスのチームが3月末に発表した研究に注目する。この研究では、同国で昨年3月2日~今年2月20日に再感染と判断された約58万人を分析。同じ期間の感染者全体に占める再感染者の割合は3・1%、オミクロン株が出現した昨年12月以降に限定すると3・8%だった。
新潟大の斎藤玲子(さいとう・れいこ)教授(公衆衛生学)は「あれだけオミクロン株が広がったのに、以前感染していた人は3%程度しかいない、という見方もできる」と指摘。オミクロン株は変異の多さによって免疫を回避するとされているが、「ウイルス全体としては同じ新型コロナなので、以前の変異株に感染して得た免疫がオミクロン株の感染を妨げる要素になっているのではないか」と話す。
国内では、オミクロン株の派生型「BA・2」への置き換わりが進む。今後の動向について、斎藤さんは「予測は難しい」としつつ、「これまでの流行が比較的小さかった地域では、BA・2による波がひどくなる恐れがある」と警戒する。
脇田座長は「接触を減らし、基本的な感染対策をして、ワクチン接種を積極的に受けてもらいたい。感染の広がりを抑制方向に持っていく対策が重要だ」と強調する。