論説 コロナワクチン4回目 医師ら除外でいいのか
新型コロナウイルスワクチンの4回目接種について、厚生労働省は60歳以上と持病のある人などに対象を絞って5月末にも開始すると決めた。
5歳以上の幅広い年齢層に接種してきた従来方針からは大きな転換だ。だが、感染者に直接対応しなければならない医療、介護従事者らも60歳未満なら除外することには懸念が残る。接種の機会を保障すべきだ。
4回目接種は、先行するイスラエルの研究成果などを踏まえ、感染すると重症になりやすい人たちの重症化予防を目的に位置付けた。これに沿って無料接種の対象者を60歳以上と、18歳以上で持病があるか、肥満など重症化リスクが高いと医師が認めた人に限定。3回目接種から5カ月以上の間隔を空けて実施する。
そもそも感染しても無症状、軽症の例が多い若い世代については、短期間しか感染予防効果が認められない4回目接種はメリットが薄いという判断だ。ワクチン1回当たりで購入費用は約2700円、ほかに接種費用約3700円もかかる。国は4回目接種などで1兆4千億円超の支出を決めているが、科学的データを基に費用対効果を見極める作業は当然だろう。
しかし厚労省に助言する専門家らの間でも、医師や看護師、高齢者施設の職員が対象に含まれなかったことに「感染のリスクを毎日背負って業務に当たっている人に範囲を広げる議論があってもよい」と異論が相次いだ。病院や高齢者施設にウイルスを持ち込むルートを断つためにも、これらの関係者は対象に加える再検討をしてほしい。
少なくとも、対象外ではあるが自費負担をしてでも接種したいと希望する人は、認められるようにすべきではないか。
一方、18~59歳で接種対象となる持病がある人、体格指数(BMI)30以上の人などは、いかに医療機関などと連携しても自治体として把握するのは簡単ではあるまい。政府が主導し、接種券送付など具体的な作業手順を早急に詰めるべきだ。
新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」が全面解除されて1カ月以上たった。東京など大都市圏を中心に感染者数は減少傾向にあるものの、一部の地方では逆に増加して昨年末からの流行のピークを上回り、「第7波」の懸念も消えない。
専門家らは、ワクチン接種や過去の感染で免疫を持った人が地方では比較的少ないことや、オミクロン株より感染力が強い派生型「BA・2」への置き換わりが約9割まで進んだことを拡大要因に挙げる。ワクチン3回目接種が遅れる若年層から高齢者へ感染が拡大する構図も相変わらずだ。
その中、3年ぶりに政府が国民へ行動制限を求めない大型連休を迎えた。人の移動、交流が盛んな連休の後には感染者数が一定程度膨らむのはほぼ確実だろう。
それでも欧米のように新型コロナとの「共生」へ局面転換を目指すなら、私たちに必要となるのは医療逼迫(ひっぱく)を招かないよう感染リスクの高い状況を自ら見極めて避ける行動だ。コロナとの共生とは、行政が主導する対策より自己防衛の比重が高まることだと言ってもいい。
大型連休は大いに羽を伸ばしたい。だが自由には責任が伴う。行楽地でも3密を避け、飲食は少人数でするなど自らを厳しく律して自分、家族、そして社会を守りたい。