循環器病の早期治療へアプリ活用 県がCT画像など病院間共有するシステム導入
兵庫県は2022年度、心臓や脳の循環器病で救急搬送された患者の早期治療につなげるため、CT画像などを病院間で共有するシステムを導入する。循環器病は発症から治療までの経過時間で後遺症の程度や死亡率が変わり、「時間との勝負」とされる。県内で情報通信技術(ICT)を活用した医療連携ネットワークを構築し、治療開始までの時間短縮を目指す。
県内の死因割合は、心不全などの心疾患が2位、脳梗塞などの脳血管疾患が4位で、合わせて2割を超える。現状は、最初に搬送された2次救急病院でCTを撮影後、高度な医療が必要と判断され、専門性の高い3次救急病院に転送された場合、再度撮影するケースが多いという。数時間かかることがある2次救急病院到着から3次救急病院での治療開始までの時間短縮が課題だった。
そこで、県は22年度から3年かけて、病院の間で画像データを共有できるアプリを、各医療圏域の基幹となる3次救急病院と、循環器の急性期医療を担う2次救急病院の計63施設に順次導入する。22年度は18施設に取り入れる計画だ。
導入後は最初の病院で撮影したCT画像などを次の病院と即時に共有。3次救急病院の医師は患者が到着するまでの間に、画像を参考にして手術などの態勢を整えることができる。
同様のシステムを使った北海道の大学病院では、救急患者の病院到着から手術開始までの時間(中央値)が約40分短縮できたとのデータが出ている。19年度から全県で導入する和歌山県では20年度、3次救急病院への転送や相談で127件の利用があり、新型コロナウイルス患者の治療にも活用されているという。
兵庫県疾病対策課は「循環器病患者の生存率を高め、後遺症の軽減を図りたい」と新システムに期待。専門の医師が遠方の医師に治療の指示を出す活用法も見据える。県は22年度当初予算に必要経費約1億円を盛り込んでいる。(大島光貴)