ランドセルってそもそも必要? 「ラン活」過熱 出雲には使わぬ地域
小学校入学を見据え、年中児(4歳児)の終わりごろからランドセルの情報収集を始める「ラン活」。年々開始時期が早まり、平均購入金額も増加傾向にある。わが子が6年間背負うランドセルは最良のものを、という保護者の思いが背景にあるが、島根県内にはランドセルを使わない地域もある。そもそもランドセルっているの? (増田枝里子)
日本鞄(かばん)協会ランドセル工業会によると、軍隊で使われるリュックサック型のかばん「背のう」が始まりとされる。オランダ語「ランセル」が語源で、1877(明治10)年に開校した学習院が採用。持ち運びの利便性が評価され、97年に形状や寸法が統一され、日本独自の文化として根付いた。
2020年までは4万~5万円前後が人気だったが、21年は6万5千円以上の購入が最も多くなり、平均額は2千円弱上昇。少子化や新型コロナウイルス禍でレジャー費用が抑えられ、子育て世帯への臨時特別給付金(高校生以下1人当たり10万円)の交付など、予算の引き上げを後押しした。
過熱する「ラン活」だが、子どもの負担は増している。ランドセル工業会によると、ランドセル本体の重さは約1・3キロ。中の荷物の平均は約4・7キロで、計6キロを毎日背負う。
学習指導要領の改訂などで教科書のページ数が増加しており文部科学省は18年、全国の教育委員会などに子どもの携行品の重さや量についてあらためて検討・配慮するよう求めた。
疑問を感じる保護者もいる。今春、次男の小学校入学を控える出雲市の母親(39)は、ランドセル購入をためらった。「高価で重く、容量が限られるのに、なぜ『小学生の当たり前』になっているの」と疑問を感じていたからだ。
売り場を訪れて、購入の予約をしたものの「ランドセルじゃなければ、毎年買い替えてもここまで(額は)かからないんじゃないか。わが子の成長や感性に基づいた選択ができればいい」と願う。
島根県内には、ランドセルを使わない地域がある。出雲市内の旧平田市地域にある8小学校の児童が背負うのは「ランバッグ」と呼ばれる黄色いナイロン製の四角いリュック。価格は8千円と安価だ。
平田学生服納入組合(6社)の組合長・小村僚志さん(64)によると「ランドセルは金額が高く、重い」という理由で、当時の平田小学校長の判断で1971年ごろ導入。約3年かけて平田全域の小学校に広がった。出雲市に編入されてからも風習は途絶えず、現役小学生は、黄色いランバッグを背に登下校する。
平田小6年の多久和楓(かえで)さん(12)は「ものがたくさん入るし、6年間使っても壊れなかった」と得意げだ。
すでに1年後の23年度入学生に向けた新作カタログが勢ぞろいし、年中児の保護者は人気作に熱視線を送る。売り場には4月にも新作が並び、予約販売会が始まる見通しだ。
だが、選択肢はいろいろある。わが子にぴったりの多様な「通学かばん」に出合えるといい。