病床使用率が急増 栃木県内の医療現場「戦争に近い」 入院続出、危機的な救急
新型コロナウイルス感染者の急増で病床使用率が過去最高に達するなど、県内の医療機関が危機的状況に陥っている。入院患者が続出し、コロナ病床は逼迫(ひっぱく)。リアルタイムで状況が変わり、治療する患者をてんびんにかけざるを得ないような状況が迫り、「戦争に近い状態」と例える医師もいる。綱渡りの現状に、県民全体での対策徹底や危機意識共有を再度求める声が上がる。
この日、自治医大付属病院救命救急センターに、茨城県内から男性のコロナ患者が運び込まれた。作業事故で脚を骨折し、救急車内で陽性が判明。コロナ患者を受け入れられる病院が近隣になく、事故から5時間後に搬送された。
命に関わる重篤な患者を診る3次救急の同センターで軽症者の受け入れが増えている。米川力(よねかわちから)副センター長(50)は「(中核病院など)2次救急の病床が満床になった結果」と説明。医療従事者にも感染が広がり、ぎりぎりの受け入れが続く。
間藤卓(まとうたかし)センター長(60)は「コロナ騒ぎが落ち着いたかのような社会の雰囲気があるが、医療現場は戦争に近い状態。重症者を診るのが3次救急であり、最悪、患者をてんびんにかけざるを得なくなる」と苦悩する。
宇都宮市の社会医療法人中山会は、運営する市内の2病院でコロナ対応として最大48床を運用。11月中旬にゆいの杜記念病院で満床に近づくなど、入院患者が続出している。入院患者の8割超を75歳以上が占める。持病を抱え全面的な介護が必要な患者が多く看護の負担も増えているという。
宇都宮記念病院の森清志(もりきよし)副院長(66)は「高齢者はコロナから回復しても持病が悪化するなどし、転院しにくい。地域の医療機関と細やかな連携が重要だ」と指摘した。
「これ以上状況が悪化すると、コロナ病床以外も含めた入院制限を考えざるを得ない」。足利赤十字病院の室久俊光(むろひさとしみつ)院長(63)も厳しい現状に直面する。
重症1床を含むコロナ対応の10床は「空けばすぐに次が埋まる状態」。両毛の地域医療の要として一般診療と3次救急体制を維持しつつも負担は増す一方だ。「コロナ病床の増床も検討しているが、その分他の診療に響く」とジレンマに悩む。各医療機関とも医療危機の回避のため、県民にはワクチン接種の積極的検討やマスクの着用、適切な受診行動などを改めて求める。