米国で迅速承認のアルツハイマー病新薬、エーザイ「日本でも年内承認目指す」
日本の製薬大手エーザイは7日、米製薬企業バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」が米食品医薬品局(FDA)に迅速承認されたと発表した。対象は早期の患者で、病気の原因とみられる物質を脳内から取り除き、認知症が進行するスピードを緩やかにする。日本でも早急に申請し、年内承認を目指すとしている。
アルツハイマー病は、「アミロイド βベータ (Aβ)」という異常なたんぱく質が脳内に蓄積することで神経細胞が傷つき、認知機能が低下すると考えられている。既存の認知症薬は脳内の信号の伝達を活発にすることで症状の一時的な改善を図るが、徐々に進む脳の損傷は止められない。レカネマブは脳内のAβを除去することで、長期的に脳の損傷の進行を抑えることを狙う。
米国の迅速承認は、深刻な病気の薬を早く実用化するために、効果が予測できれば使用を認める制度。エーザイは2021年秋から22年春にかけ、中間段階の臨床試験データでFDAに迅速承認を申請していた。
そのうえで22年秋、早期アルツハイマー病患者約1800人が参加した最終段階の臨床試験で、レカネマブを1年半にわたり、2週に1回点滴した集団は、偽薬を点滴した集団に比べ、症状の悪化を27%抑制したとする論文を発表した。
迅速承認は暫定的なもので、正式な承認を得るには、有効性を検証する追加の臨床試験が必要になる。
迅速承認を受け、エーザイの内藤晴夫・最高経営責任者(CEO)は7日、東京都内で記者会見を開き、最終段階の試験結果をFDAに提出し、正式承認の申請を行ったと説明した。米国でのレカネマブの販売は、23日の週までに始める。
米国での販売価格については、患者1人当たり年2万6500ドル(約350万円)に設定するとした。
日本で承認されれば、公的保険診療の中での使用が想定される。薬価は国が決め、米国よりも低く設定されることが一般的だが、それでも百万円単位になるとみられる。患者の自己負担は、国の高額療養費制度があるため、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)の場合は年14万4000円が上限となるが、医療財政の圧迫を懸念する声もある。
◆ アルツハイマー病 =認知症の約7割を占めるとされる。症状が表れる10~20年前から、脳内にアミロイドβが徐々に蓄積し、神経細胞が傷ついて脳が 萎縮いしゅく すると考えられている。世界保健機関(WHO)の推計では、世界の認知症患者数は約5500万人。国内では2025年に730万人に上ると推計されている。