コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…危険な変異株が流行すれば先送り
岸田首相は20日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を原則として今春、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方針を表明した。首相官邸で記者団に語った。引き下げにより、様々な行動制限が緩和される。関係省庁が今後、現在の感染対策や公的支援の見直しについて検討する。
首相は同日、首相官邸で加藤厚生労働相、後藤経済再生相ら関係閣僚と協議した。ウイルスの病原性(重症度)が低下していることなどから引き下げ可能だと判断し、5類移行に向けて作業を進めるよう指示した。
協議後、首相は記者団に「原則としてこの春に『新型インフルエンザ等感染症』から外し、5類感染症とする方向で専門家に議論してもらう」と述べた。マスク着用の目安などの感染対策も緩和する意向を示した。
政府内では、移行時期を5月の大型連休前後とする案が出ている。それまでに危険な変異株が流行すれば、移行を先送りする方針だ。
感染症法は感染症を危険性の高い順に1~5類に分類し、新型コロナは別枠の「新型インフルエンザ等」の一つとして「2類相当」で対応されてきた。5類に移行すると、同法に基づく都道府県知事の入院勧告や指示、感染者や濃厚接触者への自宅療養・待機要請などができなくなる。
5類には新型インフルエンザ対策特別措置法も適用されない。同法の緊急事態宣言などによる飲食店の営業制限や外出自粛要請もできなくなり、社会経済活動の制約が大幅緩和される。
現在、医師は診断した患者のうち重症化リスクの高い人の氏名などの情報と、それ以外の人も含めた患者数を自治体に届け出ることが義務づけられている。政府は5類移行で、一部の医療機関だけが報告する定点把握の導入も検討する。
医療費の窓口支払い分は現在は公費負担だが、5類は通常、患者の自己負担だ。政府は公費負担を当面維持し、段階的に廃止する方針だ。ワクチン接種については公費負担を高齢者などに限定することも検討する。
また、感染者に対しては都道府県の指定を受けた「発熱外来」などが対応してきたが、移行後は一般医療機関で受診できる体制を整えていく方針だ。加藤氏は20日の記者会見で「幅広い診療所に対応してもらえるようにする」と語った。
加藤氏は23日、厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会に引き下げを諮問する。政府は専門家の意見を踏まえ、2月にも5類移行の時期を判断する。