安倍元首相銃撃事件 山上徹也容疑者の「鑑定留置」が終了
安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃で撃たれた事件で、山上徹也容疑者の刑事責任能力を調べるため、去年7月から行われていた「鑑定留置」が終わり、10日、身柄が大阪拘置所から奈良市内の警察署に移されました。
親族によりますと、山上容疑者は接見した妹に対して、医師による精神鑑定について、旧統一教会に関連する同じ質問ばかりでうんざりだなどと漏らしていたということです。
去年7月、奈良市で演説をしていた安倍元総理大臣が銃で撃たれて死亡した事件で、警察は、奈良市に住む無職、山上徹也容疑者(42)を逮捕して殺人などの疑いで捜査しています。
これまでの調べによりますと、山上容疑者は母親が多額の献金をしていた旧統一教会、「世界平和統一家庭連合」に恨みを募らせた末に事件を起こしたとみられ、調べに対し「安倍元総理大臣が団体と近しい関係にあると思った」などと供述しているということです。
山上容疑者の刑事責任能力を調べるため、去年7月からおよそ半年にわたって行われた鑑定留置が終わり、10日午後、身柄が大阪拘置所から奈良西警察署に移されました。
山上容疑者を乗せた車は午後2時すぎに大阪拘置所を出発すると、前後を警備のための車両に挟まれ、およそ1時間で奈良西警察署に到着しました。
山上容疑者は、めがねをかけ、マスクを着けていて、車から降りた後、少しうつむきかげんで歩いて警察署の中に入っていきました。
精神鑑定は、山上容疑者がどのような家庭環境で育ったかや、旧統一教会の信者だった母親との関係などについて精神科医が聞き取る形で行われました。
容疑者の伯父によりますと、医師による精神鑑定では「母親が入信して献金したことをどう思うか」などという旧統一教会に関連する質問が繰り返され、山上容疑者は、過去に起きた出来事などについて素直に話したということですが、接見した妹に対して「同じ質問ばかりでうんざりだ」などと漏らしていたといいます。
妹は去年11月までに2度ほど接見しましたが、容疑者が「時間のむだ」だとして会うことを断り、今は手紙でやりとりしているということです。
奈良地方検察庁は鑑定の結果に加えて、手製の銃を製造し、演説の予定を把握して周到に銃撃を計画していたことなどを踏まえて刑事責任能力があると判断し、勾留期限の今月13日までに殺人などの罪で起訴する方針です。
精神鑑定 半年近くかけて行われる
鑑定では、山上容疑者の成育歴のほか、「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会の信者だった母親や家族との関係について精神科医が聞き取る形で行われました。
弁護士によりますと、医師の聞き取りは当初、週1回程度でしたが、去年11月中旬に鑑定期間が1月10日までに延長されてからは週2回程度と頻度を上げて行われるようになったということです。
捜査関係者によりますと、期間の延長は医師からの要望だったということで、山上容疑者の成育歴や家族との関係が銃撃事件にどう影響したかを慎重に検討していたとみられます。
医師「動機の解明に向けて重要な意義」
安藤准教授によりますと、精神鑑定では一般的に、容疑者の精神障害の有無や程度、事件に与えた影響などを調べるため本人や家族などから成育歴や家族との関係について、専門の医師が詳しく聞き取りを行うということです。
安藤准教授は「誤った判断をしないよう、鑑定は慎重を期したとみられる」と話していました。
また、山上容疑者が鑑定について「同じ質問ばかりでうんざりだ」などと漏らしていたことについては、「一般的に精神鑑定では容疑者の訴えの変遷も丁寧に見ていく必要があるので、あえて同じ質問を時間をかえて聞くこともある」と話していました。