芥川龍之介の歯車は閃輝暗点と呼ばれ、視界が見えなくなり、動く歯車が現れる症状です。
今月の話題は閃輝暗点(せんきあんてん)です。閃輝暗点は光視症の一つです。
光視症とは?
光視症は、目の網膜と水晶体に原因がある末梢性光視症と、頭の中の血管の収縮が関与する中枢性光視症があります。末梢性光視症の場合は網膜が水晶体を引っ張ってキラキラ光り、飛蚊症とともに見られます。自分のどちらの目が光っているかがわかります。
中枢性光視症の場合
中枢性光視症の場合は自分でどちらの目の異常かわかりません。中枢性光視症がいわゆる閃輝暗点です。閃輝暗点は通常片頭痛の前兆として現れる視覚異常です。視野の中にキラキラした部分が現れその部分が見えなくなります。見えているものが歪んできたり、真っ暗になったり真っ白になったりします。キラキラしたものは拡大し、歪んだドーナッツ状になり、のこぎりの縁、歯車の一部のようなものが揺れながらあるいは動きながらキラキラとしたガラス破片のように広がっていきます。
幾何学模様が稲妻のようにヂカヂカしながら動いたりします。視界の大部分が見えなくなってしまうこともあります。視覚異常は目を閉じていても起こります。このような視覚異常は5分から40分で消失します。
多くの場合は後に偏頭痛がある
多くの場合症状が治まった後に片頭痛が起こります。片頭痛は3~4時間続き、激しい場合は吐き気、嘔吐などを伴うこともあります。中年の人では閃輝暗点のみで頭痛を伴わないこともありますが、頭痛を伴わない場合は脳梗塞、脳動静脈奇形、脳腫瘍等の疑いがあります。
閃輝暗点は眼の異常ではなく、脳の視覚野の血管が収縮し一時的に血量が低下し、酸素不足により機能異常がおこり、ギラギラした光が現れます。片頭痛は血管の収縮の後、血管が異常に拡張することで血管壁に炎症・浮腫を起こすためといわれています。チョコレート、ワイン、コーヒー等でなりやすいとも言われています。
『歯車』の中にこの症状が出てきます
芥川龍之介の『歯車』の中にこの症状が出てきます。『歯車』では、半透明な歯車が徐々に増えていって視野をふさぐと書かれています。頭痛が来ることがわかっている場合はあらかじめ内服薬の処方があれば服用しましょう。手元に薬がない場合は冷やすことで、血管の急激な拡張が抑えられて痛みが和らぎます。
コーヒーなどのカフェインで、痛みが和らぐことも知られています。カフェインには脳血管収縮作用があるので閃輝暗点後の血管拡張の頭痛に効果があります。緊張性頭痛は血管の収縮で起こるので、カフェイン摂取は逆効果になります。閃輝暗点の起こる予兆がわかるひとには予防的に血管拡張薬を投与することもあります。