温泉クンの旅日記

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湯田川温泉(1)山形・鶴岡

2019-04-21 | 温泉エッセイ
  <湯田川温泉(1) 山形・鶴岡>

 湯田川温泉は、鶴岡城址あたりからだとたったの七キロ、車で十五分とかからない距離であった。鶴岡の奥座敷といわれているのだが、表座敷の次の間くらいの感じで少しも遠くなかった。

 

 鄙びた雰囲気の温泉街をゆっくり進むと、本日の宿「湯どの庵」を発見した。
 見た目は一見、料亭風の建物である。

 

 

「ご予約のお客さまでしょうか。お名前を」
 玄関の格子戸を開けたところで、漆黒のカマーエプロンというのだろうか、カフェの制服をきっちり着こなした若い女性に訊かれる。

 

 そうか、この宿はパンケーキが人気のカフェを併設しているのだ。そう言えば入口に看板もあったな。水戸など遠い県外ナンバーの車が止まっていた。
 宿泊を予約したのだがとわたしが言うと、「たいへん失礼しました。こちらにどうぞ」とロビースペースに通された。

 

 ロビーでチェックイン手続きをすると、若手番頭風の男性がわたしの重いザックを片手に奥に案内してくれる。歩きながら湯田川の読みを確認すると、「ゆだがわ」ではなくここも濁らず「ゆたがわ」と発音するそうである。(クソッ、湯田上に続いての二敗目だ)
 調べてみるとたしかに江戸時代には「庄内田川の湯」として名湯番付「東の前頭筆頭」庄内藩主の湯治場だったのである。

 

 奥のエレベーター前まで来ると、「ご案内ですが、ここまでとなっております」とザックを渡されてしまった。なんだ、部屋まで案内しないのか。でも、部屋でお茶を入れられたり非常口などを説明されたりしないのは余計な時間が省略でき、わたしには好都合である。
 荷物を置き、浴衣に早着替えをするとさっそく浴場に向かった。たしか、今の時間はロビーの裏が男風呂だと言っていた。

 

 更衣室で浴衣を脱ぎすて浴室に入る。おっ、久しぶりの檜風呂だ。この宿の浴場は檜風呂と石風呂の二つがある。

 

 湯田川温泉は今から千三百年前、和銅五年(712年)の奈良時代に開湯したと言うから古い。傷ついた白鷺が湯浴びして傷を癒しているのを発見し、昔は「白鷺の湯」とも言われている。山形県では開湯千九百年の蔵王に次いで二番目に古い温泉である。
 毎分千リットルの硫酸塩泉を湧出し源泉温度は四十度から四十四度である。

 

 浴槽だが、檜の一種である椹(さわら)の白木を用いていて、源泉の匂いを消すほどの檜独特の強烈な香りはしない。だから温泉好きにはちょうどいい。

 

 春の見頃には中庭に面した大きなガラス窓の向こうに藤棚が見られるそうだ。

 

 湯温が熱すぎず適温だったのと露天風呂がなかった分、しつこく長風呂してしまった。
 部屋に戻るときに気がついたのだが、飲み物などの自販機類がみあたらなかった。

 

 いつものように水割りを呑むとすれば、外に出て店か自販機を探させねばならないところだが、今日は鶴岡で買ってきた「大山」があるのでだいじょうぶである。


  ― 続く ―


   →「湯田上温泉(1)」の記事はこちら
   →「湯田上温泉(2)」の記事はこちら


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