温泉クンの旅日記

温泉巡り好き、旅好き、堂社物詣好き、物見遊山好き、老舗酒場好き、食べ歩き好き、読書好き・・・ROMでけっこうご覧あれ!

みそ煮込みうどんと女将

2016-01-20 | 食べある記
  <みそ煮込みうどんと女将>

「ねぇ、・・・ちゃんはいないの?」



 先ほどまで空いていた隣のテーブル席に年配の四人が座ると、グループ唯一の男性客が接客する女性店員に訊ねた。プレゼントだろうか、テーブル席の端に細身の小さな花束が置いてある。
「たしか今日はお休みかと・・・」
「そんなはずはないよ! オレ、この前にあらかじめ今日行くって言っておいたから」
 申し訳ございませんすこしお待ちくださいと、いったん厨房のほうにいきまた戻ってくる。



「本日はすこし遅れての出勤だそうですので、来次第にお伝えしますので」
 心もち肩を落とした隣の花束オジサンが、いかにも親しげに「ちゃん」付けで呼んだ人物はきっとこの店の「女将」に違いない。そして連れの三人の女性たちに、オレもまだまだモテるんだぞというところを見せたいのだろう。

 関東を北から東に縫う日本最大級の河川、「利根川」は別名「坂東太郎」と呼ぶ。
 その名を冠した、茨城をメインに北関東一帯に展開しているファミレス「ばんどう太郎」は、店舗ごとに割烹着を着た<女将>がいて丁寧な接客をしてくれると聞いた。
 短期で異動して店舗が変わってしまう店長とは違い、地元の女性や主婦を女将に任命するので長期な接客が見込める。なんでもノートに客の似顔絵や名前・特徴、食べる物や飲み物の好みをいちいち書き記しておくなどと緻密な努力をしているらしい。
 これが当たり、他のファミレスより単価が高いにもかかわらず繁盛しているという。
 夕刻に店に入って座ったら、すぐに自分のキーボトルとセット(水割り、お湯割りなど)がテーブルに運ばれてきて「・・・さま、とりあえずいつものお料理でいいですか」、などと訊かれたら年配客は、いやわたしなんぞはイチコロに取り込まれてしまう。きっと隣の客も籠絡されたクチだ。

 そんな知識があったので、千葉県の街道沿いに「ばんどう太郎」をみつけると吸い込まれるように入ってしまったのだ。もちろん、噂の女将を見てみたかったこともある。


 
 まだ開店して三十分も経たないのに、半分ほど席が埋まっている。ひとり客なのに四人掛けのテーブル席に案内してくれた。客の居心地の良さもこの店の売りである。なにしろ社訓が凄い、いまどき珍しい「親孝行」なのだ。



 和風ファミレスなので入口のショーウィンドウには天ぷら、寿司、丼物、麺料理などが並んでいた。



 メニューでみつけた「みそ煮込みうどん」を注文する。店の売りは接客や居心地だけではなく、名物料理もあるのである。
(おっとぉー、凄いでかいな。食べきれるだろうか)



 ま、食べられるところまでいってみるかと紙製のエプロンを首に巻く。
 とにかくの、具沢山である。
 蓮根、さやえんどう、椎茸、ごぼう、白菜、葱などの野菜から甘みが、鶏のつみれも出汁になって焼き豆腐によく沁みている。
 名古屋の味噌煮込みうどんとは、うどんが違う。硬くなく、しなやかな腰のあるうどんで、関東モノにはこちらのうどんのほうが抵抗感がまったくなく食べられる。
 味噌は愛知の赤味噌をベースにブレンドしてあり、それに鰹から引いたうどん出汁を合わせているのだ。見た眼と違いまったくくどくなく、あっさりとした味わいである。
 少量の野菜と出汁を半分ほど残して食べ終える。ま、横浜までの運転があるので満腹からの眠気はまずいので、初回はこれくらいだろう。

 名物のうどんは食して大満足したが、もうひとつの名物である女将は次の機会の楽しみである。ただ横浜からの客、つまり常連を望めぬ客に、北関東のファミレスの女将がはたして丁寧な接客を尽くしてくれるかどうかは若干の疑問があるが。


  →「味噌煮込みうどん」の記事はこちら

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 犬吠埼温泉(3) 千葉・銚子 | トップ | 佐原の町並みを歩く(1) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

食べある記」カテゴリの最新記事