温泉クンの旅日記

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函館、湯の川温泉(2)

2020-12-27 | 温泉エッセイ
  <函館、湯の川温泉(2)>

 体内時計が朝の到来を察知して、目を覚ました。あの恐怖映画「チャイルド・プレイ」の人形チャッキーみたいにパッチリと。(怖ぇーよ)
(いかん、いつのまに眠りに落ちてしまったのだろう・・・)
 血圧が高いせいか寝起きの一服もアイドリングも不要で、飛騨高山からくり人形なみにすっくと立ちあがる。くらっとするが、きっと二日酔のせいだ。
 くそっ、楽しみにしていた漁火観賞がパーだ。湧きはじめた後悔を中断させ、タオルを引っ掴むと一階に向かう。

 一階の海に面したラウンジに寄ると、目の前に広がるのは息を飲むような鮮やかな朝焼けだ。訳ありで格安の眺望なしの部屋から見えるのは、非常階段くらいのひどく狭い朝の景色だったのである。

 

 大浴場の内湯で、いつもの掛け湯のルーティンをしてからまずは身体を温める。

 

 湯の川温泉の発祥だが「千勝丸伝説」が語り継がれており、渚亭のホテル前にもモニュメントがあった。

 

 承応二年(1653年)、松前藩主九代松前高広(幼名千勝丸)が難病にかかり日に日に悪化していった。母の清涼院は「松前城の東にある温泉に行けば、どんな病も治る」という夢見に従い、家臣に温泉を探させ現在の湯の川温泉を発見する。千勝丸をその湯の川温泉で湯治させると全快した。
 藩は、そのお礼に薬師堂を再建し、鰐口が奉納されたという。湯倉神社には今でも鰐口が保管されている。
 箱館戦争のときには、旧幕軍の榎本武揚が傷病兵を療養させ、自身も入湯したという。

 

 

 奥に移動する途中、寝湯もみかけるが露天風呂に向かう。

 
 
 露天風呂に身体をゆっくりと沈めると、温泉を掬い、しゃっきりとするために顔を何度か拭う。温泉は自堕落な二日酔常習犯にさえ律儀にいい仕事をしてくれる。身体に溜まったアルコールの残滓を汗で搾りだしてくれるのだ。

 

 

(昨日の夜は、露天風呂から真っ暗な海に浮かぶ漁火をみるつもりだったんだよなあ・・・)
 昨夜は市電の湯の川温泉駅前にある酒場で、したたかに旨酒を飲んだ。
「真っ直ぐ歩けばすぐですよ」と言われ、そこを出てホテルへの帰り路、酒場のある信号から中環状線で南下していかねばいけないのに、誤って放射線状に西に向かってしまう湯浜通を通ってしまったのだ。
 湯元啄木亭の前に出てしまい、道を間違えたことに完全に気づき、うろたえてしまった。方向音痴ではないぞという自信が崩れ、さまよっているうちになんとか漁火通りに出たときには酔いがすこし醒めていた。
 ホテル前のコンビニで酒を調達して、部屋で再び呑みなおしているうちに寝てしまったのだ。

 二日酔には特効薬はないが、わたしは経験上、朝湯(温泉が最高)と無理して少しだけでも朝食をとる、という処方が効くと思っている。
(ジュースとパンだけでもいい、食べておくか・・・)
 部屋で日本茶を飲み、ひと休みしてから朝食会場のビュッフェに向かった。

 

 

 和朝食向けの新鮮なイカ刺しやら海産物のコーナーを素通りして、パンのコーナーで物色する。トーストと思ったがここはロールパンにするか。
 トレイを持って席を探していると、ちょうど海に面したカウンター席が空いたのでこれ幸いと座る。

 

 かなり貧しく侘びしいばかりの朝食の景色だが、残すのは絶対さけたいので、ひどい二日酔のわたしにはこの程度で充分だ。

 北海道の海の玄関口といえば苫小牧と函館だが、車で横浜から青森を通り、函館にいつも乗りこむわたしなので、帰路には必ずといっていいほど一泊している。ただ、湯の川ではなくフェリー乗り場に近い宿がどうしても多くなる。
 ビュッフェをざっと見た限りだが、前回に泊まった「ラビスタ函館ベイ」の“日本一の朝食”メニュー揃えに比べると料理のラインナップがすこし寂しいかな。

 

 湯の川プリンス渚亭は、全部屋数185室のうち、露天風呂付き客室がなんと115室もあるという超贅沢なホテルだ。
 もしもまた泊まる機会があれば、その露天風呂付きB&Bの<訳あり格安>を狙いたい。とは言ったが、予算が許せばだから難しいかな。



  →「函館、湯の川温泉(1)」の記事はこちら
  →「ラビスタ函館ベイ(1)」の記事はこちら
  →「ラビスタ函館ベイ(2)」の記事はこちら


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