温泉クンの旅日記

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ぼら待ちやぐら 石川・穴水

2010-07-14 | 一枚の写真
  <ぼら待ちやぐら>

 わたしは、じっとしているのが大の苦手である。
 床屋で小一時間、じっとしているのも耐えられない。苦痛なのだ。
 それに比べれば、八百キロを走り抜けるほうがずっとましで、わたしにいわせれば楽だ。変なヤツなのである。

 とんでもない漁法が日本にはいろいろあるもので、ひたすら待つ、という漁が能登の七尾あたりにあった。



 ボラは警戒心が非常に強い。
 漁師はこの櫓の上に座り、海底に仕掛けた袋網の上を通るのをとにかくひたすら待つ。
 光る海面を延々と見つめつづけるのは眼も眩んでさぞ大変なことだろう。
「おっ来たな」
 網の上を通るとすぐさま引き上げる。
 
 能登半島にある原始的なこの漁は、江戸時代に始まりかつては多数の櫓を見ることができたのだが、1970年代から急速に減少し、現在は観光用に残されているのみである。
 現在はこの漁を行うひとはいないという。(あたりまえだ、と思う)

 1989年にこれを観た天文学者パーシバル・ローエルが、著書「NOTO」の中で、怪鳥ロックの巣のようだと表現したという。

 もともと地域によっては高級魚として扱われた味の良い人気の食用魚だったのだが、近年になって海水汚染によりボラの身が臭いと嫌われるようになった。

 かってボラはブリ、クロダイ、スズキと同じく出世魚のひとつであったのだ。
 関東ではオボコで始まりいくつか名前を変えてイナになり、トドで終わる。
 オボコは「未通女(処女)」、イナは若衆の髷の剃り跡から「いなせ」、トドは「とどのつまり」の語源である。

 この漁を思うと、珍味のカラスミが高価なのも、頷ける。



  →「能登の風景」の記事はこちら

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