温泉クンの旅日記

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続・別所温泉(1)

2018-01-07 | 温泉エッセイ
  <続・別所温泉(1)>

 旅先での宿泊の選択肢は、ざっくり分ければ二つ、ホテルか旅館かである。
 フーテンの寅さんの好みの宿は、昔ながらの旅籠とか木賃宿のような旅館だ。そういえばシリーズの第31作の映画「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」でこんなシーンがあったことを思いだす。

  「この近くに安い宿屋ねぇかな?」。越後の場末の食堂で、夕メシを食べ終わった寅さんがおばさんに訊く。
  「近所にはねぇなぁ、駅まで行けばいくらでもビジネスがあるけど」
  「ビジネスか、ビジネスはあんべぇ悪いなぁ、独房に入っているみたいで」

 ビジネスホテルを<独房>とひと言で喝破するところが、旅暮らし慣れしている寅さんの、いかにも真骨頂である。

 久しぶりに再会した<別所温泉駅>は、駅舎の外回りが化粧直しされたように綺麗であった。



 駅から街に向かってY字路に別れた左側の、北向観音の裏側にあたる路を使って、別所温泉街の奥にある宿に向かってぐんぐん入っていく。
 駐車場に車をとめると、ザックを肩にかけて少し離れた坂を下っていく。



(おぉ~、いかにも寅さんが泊まりそうな宿じゃないか・・・)



 信州の鎌倉といわれる別所温泉の宿は意外に宿賃相場が高く、自分に相応な値段を探して今回は予約したのでまるで予備知識はなかったのである。



 入ってすぐ右の帳場で宿帳に記帳すると、ヌシのような大旦那が驚くほど身軽な足取りでトントントンと上がった二階の、寅さんなら襖をあけて手を叩き「ネエさん、熱燗もう二、三本持ってきてくれや!」と叫ぶようなとっつきの部屋に案内してくれる。もっとも、わたしの部屋は襖でなくドアだったが。

 浴衣に着替えて、なにはともあれ浴場にいってみることにする。



 階段を降りて、混然としたロビースペースを横目に廊下を奥に進む。チラリとみた古式蒼然とした応接セットのテーブルの上にでかい灰皿がおいてあるのが真に頼もしい。
 浴場への曲がり角に、花鉢が群れで飾られた共同の洗面スペースをみつけた。



 わたしに宛がわれた部屋は当たり前のように洗面所もトイレもありだが、この宿には洗面トイレのない部屋も少なからずあるのだろう。

(おっ、あそこが浴場だな・・・)
 花鉢のところを右に曲がった、薄暗い廊下の奥に「ゆ」という暖簾がかけられているのが見えた。




  ― 続く ―


   →「別所温泉(1)」の記事はこちら
   →「別所温泉(2)」の記事はこちら



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