<続・高山ラーメン>
昼前に飛騨高山に着いた。
町も平日なので思った通りすいていて、高山郵便局前のコインパーキングに車をとめられた。いつも使っている高山駅裏の大駐車場にくらべれば、陣屋も宮川朝市のどちらにも五分くらいでいける至極便利な場所である。
宮川に架かる筏橋を、赤い中橋を右手に見ながら渡って古い町並通りに入る。一般観光客は少ないが、中高生のグループがやたら多い。
高山の楽しみの一番目、まずは大好物のみたらし団子から食べることにする。
(これこれ! この味だ。なんでここにしかないのだろう・・・)
似たような味はけっこうあるが、高山のみたらしはまったく甘くなく香ばしい飛騨醤油味なので、酒呑みのわたしでも美味しく食べられるのだ。ただ、平日なら心配ないが、週末だと前日の売れ残りを買わされることもあるので要注意である。
何本でもいけちゃうのだが、一本に抑えて鍛冶橋を目指す。古い町並みあたりもちょいと来ないと店が変わっていたりするが、このコンビニは面白い。景観をかなり配慮した落ち着いた店構えになっていた。
鍛冶橋を渡り、見当をつけて裏通り飲み屋街の路地に入ると、すぐに目当ての「桔梗屋」がみつかった。
高山の楽しみの二番目の高山ラーメンだ。いつも食べている「まさご」は逆方向なので戻るのも面倒になり、前から食べてみたかったこちらにしたのである。こちらも昭和二十六年創業の老舗である。
開店して間もないのに、カウンター席がいっぱいなので靴を脱いで小上がりの卓に座る。注文はもちろん、シンプルな中華そばである。
高山ラーメン独特の細い強めの縮れ麺と香ばしい醤油スープだ。スープがよく絡む麺である。鶏がらと野菜を十時間煮込んで引きだしたこだわりスープだが、コクがあるのにとにかくあっさりしている。血圧が高いわたしも飲み切れそうだ。
同じ飛騨高山の醤油と麺を使っても東京では同じ味にならない。水が絶対的に違うのだろう、この地で食べる高山ラーメンはとにかく美味しい。ひょっとしたら清浄な空気のせいもあるかもしれない。
「おいくらですか」
カウンターの隅にいた熟年カップルの男性が女将に訊いた。
「お連れ様からさきほどいただきました」
「えっ」
そういえば、若いカップルの男性のほうが勘定を払うと外へ出て行った。煙草でも吸いにいったのだろう。
「食べ終わった? じゃ、陣屋のほうでも行こうか」
外から戻ってきた息子らしい男性が訊いた。「こんなとこまで払わせて悪いね、とても美味しかった」と小さな声で男親の声がして、連れだって店を出ていった。きっと若夫婦が世話になった両親を、いつかは一度と行きたがっていた高山の旅に招待したのだろう。歳でそれほど量を食べられない両親に合わせて軽めの昼食にしたのかもしれない。
なにしろ、わたしでも二杯食べたくなるラーメンである。
四人を送り出すと、客が掃けて店内が急に静かになった。ともかく親孝行は見ていて気持ちいい。ちょっぴり、ほのぼのとさせられてしまった。
勘定を払い外へ出ると、雨が降っていた。みるみる降りが強くなってくる。
高山に来る途中、ドシャ降りの雨雲に待ち伏せされてしまったが、あれはどちらかというとわたしが雨雲に追いついたのかもしれない。振り切って高山に来たのだが、ジリジリと追跡してきたのであろう。
雨雲をやり過ごすために近くの喫茶店に入った。
奥の席で珈琲を飲みながら外の通りの雨をみつめていて、ふと顔をあげると梁に書かれた文字が眼に飛び込んできた。
商い(春夏冬=秋がない)益々(二升)繁盛(五合)まではすらすらわかるが、そのあとの数字「2611」がどうしてもわからない。かなり悔しい。店のひとに訊いたら創業の年月ということで、それはどう考えても無理だと頷けた。奇しくもさきほどの桔梗屋と同じ創業だ。
雨もどうやらあがったようだ。三番目の楽しみである飛騨牛の串焼きは、奥飛騨でがっちり食べたから今回はパスにしておく。
→「高山ラーメン 岐阜・高山」の記事はこちら
→「高山のみたらしだんご 岐阜・高山」の記事はこちら
→「奥飛騨、フレンチと温泉(1)」の記事はこちら
昼前に飛騨高山に着いた。
町も平日なので思った通りすいていて、高山郵便局前のコインパーキングに車をとめられた。いつも使っている高山駅裏の大駐車場にくらべれば、陣屋も宮川朝市のどちらにも五分くらいでいける至極便利な場所である。
宮川に架かる筏橋を、赤い中橋を右手に見ながら渡って古い町並通りに入る。一般観光客は少ないが、中高生のグループがやたら多い。
高山の楽しみの一番目、まずは大好物のみたらし団子から食べることにする。
(これこれ! この味だ。なんでここにしかないのだろう・・・)
似たような味はけっこうあるが、高山のみたらしはまったく甘くなく香ばしい飛騨醤油味なので、酒呑みのわたしでも美味しく食べられるのだ。ただ、平日なら心配ないが、週末だと前日の売れ残りを買わされることもあるので要注意である。
何本でもいけちゃうのだが、一本に抑えて鍛冶橋を目指す。古い町並みあたりもちょいと来ないと店が変わっていたりするが、このコンビニは面白い。景観をかなり配慮した落ち着いた店構えになっていた。
鍛冶橋を渡り、見当をつけて裏通り飲み屋街の路地に入ると、すぐに目当ての「桔梗屋」がみつかった。
高山の楽しみの二番目の高山ラーメンだ。いつも食べている「まさご」は逆方向なので戻るのも面倒になり、前から食べてみたかったこちらにしたのである。こちらも昭和二十六年創業の老舗である。
開店して間もないのに、カウンター席がいっぱいなので靴を脱いで小上がりの卓に座る。注文はもちろん、シンプルな中華そばである。
高山ラーメン独特の細い強めの縮れ麺と香ばしい醤油スープだ。スープがよく絡む麺である。鶏がらと野菜を十時間煮込んで引きだしたこだわりスープだが、コクがあるのにとにかくあっさりしている。血圧が高いわたしも飲み切れそうだ。
同じ飛騨高山の醤油と麺を使っても東京では同じ味にならない。水が絶対的に違うのだろう、この地で食べる高山ラーメンはとにかく美味しい。ひょっとしたら清浄な空気のせいもあるかもしれない。
「おいくらですか」
カウンターの隅にいた熟年カップルの男性が女将に訊いた。
「お連れ様からさきほどいただきました」
「えっ」
そういえば、若いカップルの男性のほうが勘定を払うと外へ出て行った。煙草でも吸いにいったのだろう。
「食べ終わった? じゃ、陣屋のほうでも行こうか」
外から戻ってきた息子らしい男性が訊いた。「こんなとこまで払わせて悪いね、とても美味しかった」と小さな声で男親の声がして、連れだって店を出ていった。きっと若夫婦が世話になった両親を、いつかは一度と行きたがっていた高山の旅に招待したのだろう。歳でそれほど量を食べられない両親に合わせて軽めの昼食にしたのかもしれない。
なにしろ、わたしでも二杯食べたくなるラーメンである。
四人を送り出すと、客が掃けて店内が急に静かになった。ともかく親孝行は見ていて気持ちいい。ちょっぴり、ほのぼのとさせられてしまった。
勘定を払い外へ出ると、雨が降っていた。みるみる降りが強くなってくる。
高山に来る途中、ドシャ降りの雨雲に待ち伏せされてしまったが、あれはどちらかというとわたしが雨雲に追いついたのかもしれない。振り切って高山に来たのだが、ジリジリと追跡してきたのであろう。
雨雲をやり過ごすために近くの喫茶店に入った。
奥の席で珈琲を飲みながら外の通りの雨をみつめていて、ふと顔をあげると梁に書かれた文字が眼に飛び込んできた。
商い(春夏冬=秋がない)益々(二升)繁盛(五合)まではすらすらわかるが、そのあとの数字「2611」がどうしてもわからない。かなり悔しい。店のひとに訊いたら創業の年月ということで、それはどう考えても無理だと頷けた。奇しくもさきほどの桔梗屋と同じ創業だ。
雨もどうやらあがったようだ。三番目の楽しみである飛騨牛の串焼きは、奥飛騨でがっちり食べたから今回はパスにしておく。
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→「奥飛騨、フレンチと温泉(1)」の記事はこちら
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