温泉クンの旅日記

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横濱蕎麦事情(1)

2015-12-16 | 食べある記
  <横濱蕎麦事情(1)>

 訳あって蕎麦にはちょいとうるさい。
 蕎麦以外のジャンルはさておき、わたしがお薦めするリーズナブルな価格で旨い蕎麦を食べられる店にはかなり自信がある。

「お客さん、もしかして同業者のかた?」
 このときは大内宿の蕎麦屋だった。三澤屋が盛況で待ち時間が長すぎたので別の店に入ったときだった。
 蕎麦が運ばれる前に少量の蕎麦つゆを啜って真剣に吟味し、蕎麦が運ばれてから蕎麦つゆを付けずに数本の蕎麦をじっくり味わうわたしに、食べきるまで待ちきれないのか店の女将さんが刺のある声をかけてきた。きっとじっと見ていたのだろう。
「いや、単なる蕎麦好きですから」
 事実そうだから、答えようがない。

 全国で蕎麦を食べているが、旨い店に当る率は六割から七割くらいか。失敗したなと思う店もかなり多いのだ。
 首都圏には値段は高いが旨い蕎麦屋は多い。ところが、浜っ子のわたしでも横浜ではなぜか旨い蕎麦屋を知らない。
 そこで評判の高い店を訪ねてみることにした。

「お煙草はお吸いになりますか」
 入り口で女性店員に訊かれ、嬉しくなる。平日の夜は吸える席があるのだそうだ。
 広い座敷に案内され卓に座ると、まずは蕎麦前の熱燗と浅蜊の佃煮を頼むといそいそと煙草に火をつける。



(この店、来たことあるぞ・・・)
 暖簾を潜って満員のテーブル席をみたときに思いだした。旅も温泉、蕎麦にも縁がなく、囲碁に熱中しているころ、蕎麦好きの兄弟子たちに何度か連れてこられた店だ。蕎麦好きでなかったので味の記憶はまったくない。横浜駅からも歩いていける、名前は伏すが創業して六十年を超す、客には著名人も驚くほど多い老舗蕎麦屋である。

 佃煮はほんのすこし甘みが強いが、浅蜊自体はなかなかの味で酒が進む。



 燗は待ち時間が長いので芋焼酎の水割りに切り替え、ゆっくり喫煙できるので珍しく天ぷらを注文する。



 蕎麦屋で食べる天ぷらはなぜか旨い。カラリとして、なんとも丁度いい揚がり具合だ。塩も盛られ、天つゆもぴったりに味が決まっている。



 グループの客が入りだし混んできたので、締めの盛り蕎麦を頼んだ。



(うひゃあ、なにコレ、甘すぎる・・・)
 蕎麦つゆを少量啜って目を剥いた。ついで蕎麦を数本口にいれ味わうと、こちらはまずまずのレベルである。
 蕎麦自体を残すのはもったいないが、この蕎麦つゆは山葵を入れたぐらいではどうにもならない。
 山葵だけ付ける、唐辛子をかける、天つゆに唐辛子をぶちこむ、最後には百目鬼温泉流に天ぷら用の塩をかけて蕎麦つゆを使わずにようやく食べきった。蕎麦湯は使う気もしない。

 繁盛している老舗だから、きっとほかに名物があるのであろうが、盛り蕎麦はその蕎麦屋の基本、すっぴんの素顔である。それとも横浜の蕎麦好きは甘党が多いのだろうか。

 ひさしぶりの横浜での蕎麦屋一軒目、ここはお薦めできそうもない。


  ― 続く ―


  →「百目鬼温泉」の記事はこちら

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