<日比谷、アーカイブ・カフェでサッチモ>
「日比谷公会堂」が耐震工事のために今年四月から長期休館になるというニュースを見ていたら、館内にある、わたしが好きそうなレトロな雰囲気のカフェも直前の三月十五日で閉店するという。
「なんだなんだ、そんなカフェあったなんて知らないぞ!」
思わず声に出してしまう。開店したのが平成二十三年五月ということなので、五年前だ。わたしが知らないのも無理はない。十五日に閉店か・・・間に合うな。よし、行ってみよう。
「日本のカーネギーホール」とも呼ばれた日比谷公会堂は昭和四年(1928年)竣工され、鉄骨鉄筋コンクリート造りで四階建て、席数は二千七十四席あるそうだ。戦前・戦後にかけて、著名な演奏家によるコンサートが行われた。
リサイタル、講演会、政治演説会なども行われ、昭和三十五年、当時日本社会党委員長だった浅沼稲次郎が十七歳の少年に暗殺されたテロ事件(1960年10月12日)の舞台になったのもこの公会堂での立会演説会だった。
カフェの場所を探して一周してもとの場所に戻ったら、黒板みたいな看板が出ていた。
天井の高い店内には、バラバラな組み合せのテーブルと椅子が整然といえない配置で並んでいた。
珈琲を頼み料金を先払いすると、蓄音機前の馬鹿でかい応接セットみたいなソファに腰を下ろす。
カフェのなかにはクラシック音楽が静かに流れていた。
音楽を中断するようなコーヒーミルが豆を挽くガリガリ音が始まり、なんだ注文してからゼロスタートするのかよ、と思う。このカフェ、残念ながら禁煙なので間が持てないのだ。
しょうがないので歩き回って時間を潰す。
往時はこの場所から観客が入って入場券を渡し、クロークに外套をあずけ、両側の階段を昇って客席に向かったようだ。
次々と客が入ってきて思い思いの席に座る。女性客はシフォンケーキセット(八百五十円)の注文が多いようだ。
ずいぶんと待たされて珈琲が運ばれてきた。
(おっ、旨い!)
あの若い店員さん、なかなかの腕前を持っているようだ。ああ、煙草吸いたい。腹も減ってホットドッグを食べたいが時間かかりそうだし・・・な。
「あ、あの、もう少ししたら蓄音機でレコードかけますので良かったら・・・」
ジャケットを着始めたわたしの背中に声がかかり、また座りなおした。蓄音機でレコードか・・・煙草を我慢してちょっと聞いていくか。掛けた声がすこし大きかったのは客全員に知らせたかったのだろう。
クラシック音楽を止めて、慣れた手つきで蓄音機にレコードと針をセットすると、脇にあるハンドルをグルグル回した。
「!?」
瞬間、店内の全員から自然に湧く笑みと溜息にも似た歓声が同時にあがった。
クラシックかと思ったら、なんとジャズ、それもこの声は「サッチモ(ルイ・アームストロング)」じゃないか。曲名は残念ながらわからないが、軽快なテンポのなかなかいい曲だ。
迫力のある低く野太い声が一気に店内を満たした。レコードはノイズも思ったより少なく、デジタルよりは暖かみがある音質だ。
興が乗ったのか、若いママがまだ幼稚園くらいの小さな女の子と蓄音機前で踊り始める。
うんうん、その踊りたくなる気持ち、わかるぞ。
サッチモを蓄音機でのサービス・・・なんか、来てよかったと満足した。
→「八方美人なカレー」の記事はこちら
「日比谷公会堂」が耐震工事のために今年四月から長期休館になるというニュースを見ていたら、館内にある、わたしが好きそうなレトロな雰囲気のカフェも直前の三月十五日で閉店するという。
「なんだなんだ、そんなカフェあったなんて知らないぞ!」
思わず声に出してしまう。開店したのが平成二十三年五月ということなので、五年前だ。わたしが知らないのも無理はない。十五日に閉店か・・・間に合うな。よし、行ってみよう。
「日本のカーネギーホール」とも呼ばれた日比谷公会堂は昭和四年(1928年)竣工され、鉄骨鉄筋コンクリート造りで四階建て、席数は二千七十四席あるそうだ。戦前・戦後にかけて、著名な演奏家によるコンサートが行われた。
リサイタル、講演会、政治演説会なども行われ、昭和三十五年、当時日本社会党委員長だった浅沼稲次郎が十七歳の少年に暗殺されたテロ事件(1960年10月12日)の舞台になったのもこの公会堂での立会演説会だった。
カフェの場所を探して一周してもとの場所に戻ったら、黒板みたいな看板が出ていた。
天井の高い店内には、バラバラな組み合せのテーブルと椅子が整然といえない配置で並んでいた。
珈琲を頼み料金を先払いすると、蓄音機前の馬鹿でかい応接セットみたいなソファに腰を下ろす。
カフェのなかにはクラシック音楽が静かに流れていた。
音楽を中断するようなコーヒーミルが豆を挽くガリガリ音が始まり、なんだ注文してからゼロスタートするのかよ、と思う。このカフェ、残念ながら禁煙なので間が持てないのだ。
しょうがないので歩き回って時間を潰す。
往時はこの場所から観客が入って入場券を渡し、クロークに外套をあずけ、両側の階段を昇って客席に向かったようだ。
次々と客が入ってきて思い思いの席に座る。女性客はシフォンケーキセット(八百五十円)の注文が多いようだ。
ずいぶんと待たされて珈琲が運ばれてきた。
(おっ、旨い!)
あの若い店員さん、なかなかの腕前を持っているようだ。ああ、煙草吸いたい。腹も減ってホットドッグを食べたいが時間かかりそうだし・・・な。
「あ、あの、もう少ししたら蓄音機でレコードかけますので良かったら・・・」
ジャケットを着始めたわたしの背中に声がかかり、また座りなおした。蓄音機でレコードか・・・煙草を我慢してちょっと聞いていくか。掛けた声がすこし大きかったのは客全員に知らせたかったのだろう。
クラシック音楽を止めて、慣れた手つきで蓄音機にレコードと針をセットすると、脇にあるハンドルをグルグル回した。
「!?」
瞬間、店内の全員から自然に湧く笑みと溜息にも似た歓声が同時にあがった。
クラシックかと思ったら、なんとジャズ、それもこの声は「サッチモ(ルイ・アームストロング)」じゃないか。曲名は残念ながらわからないが、軽快なテンポのなかなかいい曲だ。
迫力のある低く野太い声が一気に店内を満たした。レコードはノイズも思ったより少なく、デジタルよりは暖かみがある音質だ。
興が乗ったのか、若いママがまだ幼稚園くらいの小さな女の子と蓄音機前で踊り始める。
うんうん、その踊りたくなる気持ち、わかるぞ。
サッチモを蓄音機でのサービス・・・なんか、来てよかったと満足した。
→「八方美人なカレー」の記事はこちら
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