夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

贋作考 水墨山水図 その2 橋本雅邦筆 橋本秀邦の鑑定について

2021-03-05 00:01:00 | 掛け軸
今週の「なんでも鑑定団」(2021年3月2日放送)において試作と思わる「鏡獅子(かがみじし) 平櫛田中作」が出品され、興味深く拝見いたしました。



インターネットオークションにて50万円近くで落札したという作品ですが、結果は悪意のある贋作で評価金額は5000円だそうです。

鑑定団の評:完璧な偽物。眉が上の方で切れて終わっているが、本来は上まで伸びている。おそらく何かの図版を見て作ったのだろうが、その部分が写っていないのでそこで終わってしまっている。

銘が後ろに彫られているが、その位置に彫って上から彩色するのは考えにくい。

装束の文様部分は型紙を使って上から塗っているのではないか。相当悪意を持って量産された贋作。

なお平櫛田中は鏡獅子の完成のための資金不足に対して、「鏡獅子」の試作を売却して資金を調達していたらしいですね。

実は当方でも本ブログで紹介している作品がありますが、不審に思っている点が幾つかあり、上記の説明で納得した次第です。

試作? 鏡獅子(かがみじし) 伝平櫛田中作 誂箱
高さ320*台座:幅382*奥行219



「試作?」と「伝平櫛田中作」にて「伝」としてる点で当方では疑問の余地があるとしている証左です。ただ鑑定団の出品作にあるような眉の描き方や銘の彫り方ではありません。ただあくまでも文様がちょっと気になる・・・、この試作段階で絵付けが平野富山になった理由が関係ある可能性もあります。

さて本日紹介する橋本雅邦の作品ですが、橋本雅邦の作品では本ブログにて氏素性の明確な東京美術倶楽部の鑑定書のある作品などを紹介してきましたが、非常に真贋の判断が難しい作品群として紹介しております。

所定鑑定人として子息の橋本秀邦、永邦の鑑定(次男・橋本永邦、三男・橋本秀邦)のある作品がありますが、それとて信ずるに足らぬ鑑定作品が多いものです。



先日紹介した「橋本秀邦の鑑定について」と題して紹介した「扇面 海辺松聲図」は橋本秀邦の鑑定箱書のある作品ですが、この作品は真作に相違ないでしょう。ただ前述のように橋本秀邦の鑑定箱書があっても、その箱書が本物であっても、橋本雅邦の作品自体が怪しい作品は数多くあります。

本日はそのような作品を検証してみました。

贋作考 水墨山水図 その2 伝橋本雅邦筆
紙本水墨軸装 軸先鹿角? 橋本秀邦鑑定箱(大正4年1月下旬)+タトウ 
全体サイズ:横633*縦2240 画サイズ:横495*縦1350

 

橋本雅邦の作品には透明感のある淡彩をメインとして色彩画、国画会における濃密な水墨画、そして破墨水墨画のような作品がありますが、本作品は破墨水墨画風の作品に分類されるでしょう。



筆致はうまいが、橋本雅邦のわりには稚拙かな?



いいのは表具・・・。



書きなれた感はあります。



橋本秀邦鑑定箱(大正4年1月下旬)が記されおり、鑑定箱書には「大正拾四年一月下院(浣) 秀邦誌 押印」と鑑定の書付があります。「院」を「浣」と間違える?などの多少迷うところはありますが、おそらくこの箱書きは本物でしょう。

「誌」という署名は微妙ですね。橋本秀邦鑑定では他には「鑑」などの署名があります。鑑定する人によっては「真作」、「真作と思われる」、「見ただけ」というのを区別して「鑑定書」に表現を変えて署名する鑑定人がいるそうです。

  

橋本雅邦の別号「克己斎」の朱文白長方印が押印されていますが、この印章は注意を要します。要するに贋作に多用されている印章のひとつのようです。この印章も疑いをぬぐい切れません。



正直なところ、いいような悪いような、どうにも当方では判断のつきかねる作品のひとつです。本日はどうも本ブログにて紹介する作品の信憑性が疑われるような作品ばかりになってようで、本当に申し訳ありません。


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2 コメント

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橋本雅邦の落款 ()
2021-03-20 22:04:08
はじめまして 
いつも楽しく記事を拝見させてもらってます。私も、素人ですが、雅邦の落款で、邦のこざと部分を下に落として、続けて書くのは、60台ですが、このように細く書くのは別の時代のようです。克己の印章ですが、真ん中のPが、本物は角張っているようにおもいます。雅邦の透明感のある水墨画は濃淡のグラデーションが豊富なせいで、絵はよく特徴を捉えているようにもみえます。あくまで、素人の意見ですが、、、
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橋本雅邦の印章 (夜噺骨董談義)
2021-03-28 14:43:29
コメントをありがとうございます。当方もコメントどおりという見解です。
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