当方では古くからあるものを含めて陶磁器の保管箱の誂えはほぼ完了しつつあります。遺っているのは価値の云々よりも箱がないと毀す恐れのあるもの。たとえば下記の作品のかなり大きめの梨地の高杯です。保管箱がないので漆の梨地部分が痛んだりしています。
梨地高杯
誂え箱
上部口径195*胴部最大径63*底168径*高さ296
古いもので、傷がありますがまだ使える美品です。
高坏(たかつき)とは本来は皿に1本脚のついた盛り付け用の土器のことですが、仏具として一般的に使用され、菓子や果物など仏様にお供えをする食物を盛る台です。「高月」という別名で呼ぶこともあります。
「仏飯器」・「茶湯器」と同じく飲食供養具の一つですが、本来は命日などの特別な日にのみ使用します。正式な高坏の皿は角高形のようですが、現状は略式(円形)のものが一般的です。最近のものはプラスチックや、漆器でも漆に中国製を使っているものがほどんどですので、このように無垢で純に日本製は貴重になっています。いわゆる「JAPAN」という作品です。
*本来は対になるのかもしれませんが、当方にはこの大きさでは一個しかありません。
もうひとつ箱をどうしようかと思っていたのは下記の作品です。
辰砂花瓶 清朝期?
口縁補修跡 誂箱
口径155*胴径210*高台径162*高さ280
中国清王朝景徳鎮の民窯のものか?、もしくは官窯の花瓶かと思われます。日本では辰砂の瓶と称するものですが、銅を呈色剤とした真っ赤な辰砂を中国人は牛血と呼ぶようです。今となっては清朝期の単色の焼き物は徐々に貴重で珍しい作品となっていくかもしれません。いわゆる「CHINA」というのかな? この色は今の中国では別の発色となり、この辰砂は数が少ないようです。
牛血紅と称された辰砂の釉薬は厚く施された釉薬が流れ落ちる為、下に向かうほど色が濃くなり、表面には細かな貫入が入ります。残念ながら口縁を共色で丁寧に補修されています。底(高台内)に釉薬が施されていることが上級品とされるようです。底(高台内)に釉薬のない作品はお土産品程度の作品とされます。
古くからあった作品で、捨てるか、とっておくか迷った作品群でしたが、保管しておくに値すると判断し、整理した陶磁器の作品はこれで最後です。
さて本日紹介する源内焼の作品はすでに「源内焼 その74」で紹介されている作品と同型の作品です。その所蔵している作品(「源内焼 その74」)より状態がいいので本作品を入手しました。
源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2
合箱入
最大口径263*高台径186*高さ35
「平賀源内のまなざし 源内焼」(五島美術館出版)掲載:作品NO43:271*182*34
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO11:276*182*35 NO12:264*180*34
なんでも鑑定団 同手出品歴有
同図の作品には上記写真右のように最大口径270を超える作品(当方の所蔵作品 源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2)と上記写真左にある本作品のように少し小さめの口径が265程度の作品(源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2)の2種が見受けられます。
ちょっとマニアックな点かもしれませんが、大きめの作品が型の抜けなどが悪い状態の良くない作品が多く、小さめの作品が作品が型の抜けなどがよい上等品が多いようです。製作年や窯の違いなのか、注文先の違いなのかは不明です。
手前に鶴、その後ろには孔雀、木の上にはとまっているインコ、少し解りにくいですが奥にはキジ、右下には小さくサギが描かれています。
この図柄は「五鳥紋という吉祥文」とされます。なんでも鑑定団での評にそのように記述されていましたが、どのような理由での吉祥文かは不明です。推するにその各々の鳥が吉兆の証とされているからでしょうか。
源内焼にほぼ共通のデザインですが、口縁に籠のような紋様があり、これが見込みの絵に対して額縁の役割を果たしています。
源内焼の記事にて記述しているように源内焼は胎土が楽焼のように脆いので、完品で遺っている作品は少なくなっています。
破損は少なくても口縁の欠け、絵の部分の擦れによる釉薬の剥落などのある作品が多く、源内焼は完品としての存続が難しい陶磁器のひとつですね。それこそ保存箱を誂える必要のある作品です。
釉薬には虹彩が見れるのも状態のいい作品の特徴です。
古九谷などもそうですが、いい焼き上がりには虹彩がみられます。よくコールタールのようなもので作為的に虹彩がみられる贋作があると聞き及んでいますが、そのような贋作は意図のある贋作で蒐集の初期の段階(初心者レベル)にて当方では除外されています。
上述のようにこの同図の作品において数が多いわりに型の抜けのよい作品が少ないのは、推するに源内焼が衰退期にかかっていたのかもしれませんね。型を浮世絵の担当の彫師(一説には鈴木春信を担当していた工房)が作っていたとされますが、丁寧な仕事が徐々に失われた可能性があるように思います。
源内焼は衰退期の頃には四国を中心に他の窯でも似たような作品が作られ、また明治末期には源内焼の再興を目的に製作されていますが、それらの作品は本来の源内焼の足元にも及ぶものではありません。
現代では陶芸家の関心が釉薬のほうに向かい、また奇をてらった作品ばかりが多いのですが、そのような技量では現代での源内焼の復活はまず無理であり、今となっては本来の源内焼は貴重な作品群だと思います。
*当時の源内焼は一部の富裕層にのみ売られ、そのため近年まで評価されることはあまりなかったとされます。現在も個人所蔵が多く、大規模な展覧会の開催が難しいとされているようです。
ちなみに「なんでも鑑定団」出品作(詳細は「なんでも鑑定団情報局」)や図集などの同手の作品例は下記のあります。
同型作品の参考作品
源内焼 三彩五鳥文輪花皿
なんでも鑑定団出品作品
評価金額70万
この「なんでも鑑定団」に出品された作品は状態があまりよくないものと思われましたが、評価金額は70万円だそうです。相変わらず高すぎますが、一般的な相場は一桁下だと思います。ちなみに本作品の入手はインターネットオークションでの入手ですが落札金額は5万円以下です。
五島美術館出版の図集には下記の作品が掲載されています。
参考作品
「平賀源内のまなざし 源内焼」(五島美術館出版)掲載:作品NO43:271*182*34
本文の説明には「孔雀など源内焼としては文様が細かな彩色を施しているが、白鷺が白色のままのため目立たない。雌の孔雀(雉?)に用いている、不透明なオレンジ色の釉薬の使用例は少ない。」とありますが、正しくは「雌の孔雀」ではなく前述のように「雉」です。五島美術館出版の図集が間違っていますね。
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」の図録に掲載されている作品は大きめの作品と小さめの作品の2種が掲載されています。
参考作品
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO11:276*182*35
小さめの作品のほうがやはり状態がいいようです。
参考作品
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO12:264*180*34
これらの作品と本作品を比較してみるとあらためて本作品の状態の良さが解ります。
本作品は人気があったようで大皿の割には数があるように推察されますが、状態の非常に良い貴重な作品としていいでしょう。
さて当方では源内焼の所蔵作品が130を超えようとする源内焼の作品ですが、脆いゆえにその保管には慎重を要しますね。
展示室の廊下に昨年に新設した棚に新たに大皿専用にスペースを設け保管しています。
展示室ですので保管箱などがひと目については興ざめするものです。当方では保管作品をひと目につくところに置いておくことはしないようにしています。先輩の立派な蒐集者も整理はきちんとしており、決して整理している保管作品をひと目につくところには置いていませんでした。
中皿より小さめの作品は同じく展示室の棚に保管しています。
数の多い作品はバラバラに保管するとどこに収納したか分からなくなります。整理においては大きさ別など一定の基準にて作品がどこにあるかすぐに解ることが肝要のようです。
番号や写真、必要に応じてQRコードにてデータとリンクするのもいいでしょう。それとスマホさえあれば本ブログにて作品データや画像がどこでも見られます。当方の本ブログ作成の目的のひとつはそのようなデータベース化ですが、いろいろと道具が便利になってきて本ブログの必然性も薄れてきました。
梨地高杯
誂え箱
上部口径195*胴部最大径63*底168径*高さ296
古いもので、傷がありますがまだ使える美品です。
高坏(たかつき)とは本来は皿に1本脚のついた盛り付け用の土器のことですが、仏具として一般的に使用され、菓子や果物など仏様にお供えをする食物を盛る台です。「高月」という別名で呼ぶこともあります。
「仏飯器」・「茶湯器」と同じく飲食供養具の一つですが、本来は命日などの特別な日にのみ使用します。正式な高坏の皿は角高形のようですが、現状は略式(円形)のものが一般的です。最近のものはプラスチックや、漆器でも漆に中国製を使っているものがほどんどですので、このように無垢で純に日本製は貴重になっています。いわゆる「JAPAN」という作品です。
*本来は対になるのかもしれませんが、当方にはこの大きさでは一個しかありません。
もうひとつ箱をどうしようかと思っていたのは下記の作品です。
辰砂花瓶 清朝期?
口縁補修跡 誂箱
口径155*胴径210*高台径162*高さ280
中国清王朝景徳鎮の民窯のものか?、もしくは官窯の花瓶かと思われます。日本では辰砂の瓶と称するものですが、銅を呈色剤とした真っ赤な辰砂を中国人は牛血と呼ぶようです。今となっては清朝期の単色の焼き物は徐々に貴重で珍しい作品となっていくかもしれません。いわゆる「CHINA」というのかな? この色は今の中国では別の発色となり、この辰砂は数が少ないようです。
牛血紅と称された辰砂の釉薬は厚く施された釉薬が流れ落ちる為、下に向かうほど色が濃くなり、表面には細かな貫入が入ります。残念ながら口縁を共色で丁寧に補修されています。底(高台内)に釉薬が施されていることが上級品とされるようです。底(高台内)に釉薬のない作品はお土産品程度の作品とされます。
古くからあった作品で、捨てるか、とっておくか迷った作品群でしたが、保管しておくに値すると判断し、整理した陶磁器の作品はこれで最後です。
さて本日紹介する源内焼の作品はすでに「源内焼 その74」で紹介されている作品と同型の作品です。その所蔵している作品(「源内焼 その74」)より状態がいいので本作品を入手しました。
源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2
合箱入
最大口径263*高台径186*高さ35
「平賀源内のまなざし 源内焼」(五島美術館出版)掲載:作品NO43:271*182*34
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO11:276*182*35 NO12:264*180*34
なんでも鑑定団 同手出品歴有
同図の作品には上記写真右のように最大口径270を超える作品(当方の所蔵作品 源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2)と上記写真左にある本作品のように少し小さめの口径が265程度の作品(源内焼 その127 三彩五鳥文輪花皿 その2)の2種が見受けられます。
ちょっとマニアックな点かもしれませんが、大きめの作品が型の抜けなどが悪い状態の良くない作品が多く、小さめの作品が作品が型の抜けなどがよい上等品が多いようです。製作年や窯の違いなのか、注文先の違いなのかは不明です。
手前に鶴、その後ろには孔雀、木の上にはとまっているインコ、少し解りにくいですが奥にはキジ、右下には小さくサギが描かれています。
この図柄は「五鳥紋という吉祥文」とされます。なんでも鑑定団での評にそのように記述されていましたが、どのような理由での吉祥文かは不明です。推するにその各々の鳥が吉兆の証とされているからでしょうか。
源内焼にほぼ共通のデザインですが、口縁に籠のような紋様があり、これが見込みの絵に対して額縁の役割を果たしています。
源内焼の記事にて記述しているように源内焼は胎土が楽焼のように脆いので、完品で遺っている作品は少なくなっています。
破損は少なくても口縁の欠け、絵の部分の擦れによる釉薬の剥落などのある作品が多く、源内焼は完品としての存続が難しい陶磁器のひとつですね。それこそ保存箱を誂える必要のある作品です。
釉薬には虹彩が見れるのも状態のいい作品の特徴です。
古九谷などもそうですが、いい焼き上がりには虹彩がみられます。よくコールタールのようなもので作為的に虹彩がみられる贋作があると聞き及んでいますが、そのような贋作は意図のある贋作で蒐集の初期の段階(初心者レベル)にて当方では除外されています。
上述のようにこの同図の作品において数が多いわりに型の抜けのよい作品が少ないのは、推するに源内焼が衰退期にかかっていたのかもしれませんね。型を浮世絵の担当の彫師(一説には鈴木春信を担当していた工房)が作っていたとされますが、丁寧な仕事が徐々に失われた可能性があるように思います。
源内焼は衰退期の頃には四国を中心に他の窯でも似たような作品が作られ、また明治末期には源内焼の再興を目的に製作されていますが、それらの作品は本来の源内焼の足元にも及ぶものではありません。
現代では陶芸家の関心が釉薬のほうに向かい、また奇をてらった作品ばかりが多いのですが、そのような技量では現代での源内焼の復活はまず無理であり、今となっては本来の源内焼は貴重な作品群だと思います。
*当時の源内焼は一部の富裕層にのみ売られ、そのため近年まで評価されることはあまりなかったとされます。現在も個人所蔵が多く、大規模な展覧会の開催が難しいとされているようです。
ちなみに「なんでも鑑定団」出品作(詳細は「なんでも鑑定団情報局」)や図集などの同手の作品例は下記のあります。
同型作品の参考作品
源内焼 三彩五鳥文輪花皿
なんでも鑑定団出品作品
評価金額70万
この「なんでも鑑定団」に出品された作品は状態があまりよくないものと思われましたが、評価金額は70万円だそうです。相変わらず高すぎますが、一般的な相場は一桁下だと思います。ちなみに本作品の入手はインターネットオークションでの入手ですが落札金額は5万円以下です。
五島美術館出版の図集には下記の作品が掲載されています。
参考作品
「平賀源内のまなざし 源内焼」(五島美術館出版)掲載:作品NO43:271*182*34
本文の説明には「孔雀など源内焼としては文様が細かな彩色を施しているが、白鷺が白色のままのため目立たない。雌の孔雀(雉?)に用いている、不透明なオレンジ色の釉薬の使用例は少ない。」とありますが、正しくは「雌の孔雀」ではなく前述のように「雉」です。五島美術館出版の図集が間違っていますね。
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」の図録に掲載されている作品は大きめの作品と小さめの作品の2種が掲載されています。
参考作品
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO11:276*182*35
小さめの作品のほうがやはり状態がいいようです。
参考作品
平賀源内先生遺品館企画展「讃岐の源内焼」掲載NO12:264*180*34
これらの作品と本作品を比較してみるとあらためて本作品の状態の良さが解ります。
本作品は人気があったようで大皿の割には数があるように推察されますが、状態の非常に良い貴重な作品としていいでしょう。
さて当方では源内焼の所蔵作品が130を超えようとする源内焼の作品ですが、脆いゆえにその保管には慎重を要しますね。
展示室の廊下に昨年に新設した棚に新たに大皿専用にスペースを設け保管しています。
展示室ですので保管箱などがひと目については興ざめするものです。当方では保管作品をひと目につくところに置いておくことはしないようにしています。先輩の立派な蒐集者も整理はきちんとしており、決して整理している保管作品をひと目につくところには置いていませんでした。
中皿より小さめの作品は同じく展示室の棚に保管しています。
数の多い作品はバラバラに保管するとどこに収納したか分からなくなります。整理においては大きさ別など一定の基準にて作品がどこにあるかすぐに解ることが肝要のようです。
番号や写真、必要に応じてQRコードにてデータとリンクするのもいいでしょう。それとスマホさえあれば本ブログにて作品データや画像がどこでも見られます。当方の本ブログ作成の目的のひとつはそのようなデータベース化ですが、いろいろと道具が便利になってきて本ブログの必然性も薄れてきました。