夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

忘れ去られた画家 はるさめ美人図 三木翆山筆 その6

2019-04-13 00:01:00 | 掛け軸
三木翆山という美人画を得意とする画家を知っている人は少ないでしょうね。本ブログで紹介する作品は6作品目となりました。



忘れ去られた画家 はるさめ美人図 三木翆山筆 その6
絹本着色金泥軸装 軸先練 共箱
全体サイズ:縦2010*横385 画サイズ:縦1430*横265

 

三木翆山は晩年に京都河原町蛸薬師の繁華街に地上7階、地下2階、総床面積1400坪もの国際的な美術サロン、インターナショナル三木アートサロン設立を計画する。ところが、悪徳不動産の詐欺にかかり、2000坪の家屋敷アトリエも手放さざるを得なくなり、老年の翠山にこの挫折は堪えたのか、2年後(昭和32年3月25日)失意のうちに急逝している。



享年73歳だったようですが、いつの世も似たような話はあるものです。



翠山は美人画を得意としており大正14年(1925年)から京都の佐藤章太郎商店という版元から、京都風俗を取り上げた新版画「新選京都名所」シリーズを版行、同年吉川観方と創作版画展を開催しています。昭和7年(1932年)第13回帝展からは無鑑査となり、昭和17年(1942年)に師の栖鳳が没した後は画壇を離れ、個展で作品を発表し始め、一方、昭和27年(1952年)から1年余り渡米し、美人画の個展を開催、昭和28年(1953年)メトロポリタン美術館から終世名誉会員の称号を贈られています。



作品略年譜
大正2年 第7回文展「朝顔」初入選。
大正3年 第8回文展「青柿の檐(ノキ)」。
大正10年 第3回帝展「汐沈む女」。
昭和2年 秩父宮家御用画「朝の清見瀉」。第8回帝展「千姫」。
昭和4年 第10回帝展「木蔭」。聖徳太子奉賛展「旅の宿」。高松宮家御用画「春乃野」。
昭和5年 仏蘭西美術展「雪の道」。久迩宮家御用画「愛鳥」(杉戸)。
昭和7年 第13回帝展「嫁ぐ姉」。
昭和8年 第14回帝展「順風」。
昭和9年 第15回帝展「雪の晨」。
昭和14年 第3回文展「これにも月の入りたるや」。
昭和15年 聖徳太子奉賛展「維新の花」。
昭和17年 第5回文展「元禄快挙」。
昭和18年 第6回文展「巴御前」。



力作ではありませんが、着物の絵柄などうまく描けています。



落款からは本ブログで紹介した「狸」を描いた作品と同時期と推定されます。

  

日本画の近代美人画では伊東深水、鏑木清方、上村松園は別格ですが、その三人の跡を継いだ画家として評価してもよいのでしょう。



掛け軸は美術館の展示のようにガラス越しで鑑賞するものではありません。自然の採光にて時として影のある中で、時としてはろうそくの明かりで鑑賞するものです。その光と影の中で掛け軸は一層、魅力的な美を発します。そのような鑑賞するためには自分で所蔵するしかありませんし、そのような場を自分で作るしかありません。



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