夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

渓山漁舟 平福百穂筆 その132 & 秋景山水 平福百穂筆 その131

2025-01-11 00:01:00 | 掛け軸
昨年末はコロナ禍以来の年末恒例の高校の同級会が再開しました。6人の参加となり、思い出話や近況報告で盛り上がりました。遠くから来た幼馴染は我が家に泊まっていきました。実は彼が設計したのが「男の隠れ家 その1」です。



泊まった部屋に飾ってあるのは市川鉄琅作の観音像です。今回は義母が作ってくれたカバーを持ってきました。



この部屋は15年前に亡くなった母の寝室です。「男の隠れ家 その1」は母が一人で20年間住んでおり、まだ母や父の遺品があちこちにあります。ちなみに当方の父は小生が中学校に入学した頃に亡くなっています。

*下記写真の箪笥は楓でできているらしい・・??



さて当方の郷里の画家の作品の入手先は主に地元の骨董店、各オークションカタログ、そして一番多いのはインターネットオークションです。インターネットオークションは贋作が多いとして警戒する方も多いようですが、実際にそのとおりで、いくら慎重を期しても不愉快な思いをすることは多々あります。それでももっとも流通する量が多く、その量は地元の骨董店、各オークションカタログは比ではありません。ある程度の真贋を見極める素さえあれば、つぎ込む費用に無理しなければ、健全に楽しめる市場だと思います。

当方の蒐集対象は地元出身や地元に関わりの多い画家などマイナーな画家の作品が多いので、ネットオークションは欠かせないマーケットだととらえています。寺崎廣業、平福父子、福田豊四郎、倉田松濤などは地元の骨董店でもよい作品はなかなかないものです。ただ蓑虫山人の作品は今でネットオークションになかなかいい作品は出なくなりました。ネットオークションは作品数が多いわりにあっという間にその数が減るという現象がおきますね。天龍道人などもその兆候があります。一気に供給量がさばけてしまうという現象です。入手する時に入手しないともはやない・・。その分かえって地元の骨董店の方が少ないですが、供給量はなぜか安定しています。

*ここからの写真は「男の隠れ家 その3」からです。



寺崎廣業、福田豊四郎、伊勢正義のいい作品はめっきりインターネットオークションで見かけなくなりましたね。逆に著名な画家のいいものが出始めて、今はそれも下火のようです。全体に一時期の比べてまがいものが減ったと同時に掘り出し物も減ったようです。

僅か平福百穂のいいものが出ているようですので、本日はその作品の紹介です。

渓山漁舟 平福百穂筆 その132 
絹本水墨淡彩軸装 軸先骨 共箱二重箱
全体サイズ:縦2140*横550 画サイズ:縦1270*横420

 

水墨一色や淡彩の作品が多い平福百穂の山水画においては珍しく作品上部にのみ青色が使われています。



表具はいい具合に作品に似合っています。



絵画における自然主義、写実主義を主唱した平福百穂らしい作品。大正末期から昭和にかけての頃の作と推定されます。



近代山水画の巨匠川合玉堂にも共通する画風ですね。ところで百穂の七回忌にあたって、川合玉堂、鏑木清方、結城素明、川端龍子、田口掬汀が発起人となり、昭和14年9月に百穂歌碑が建立されています。上部に田口省吾の描いた百穂の半身像を刻み、その下に川端龍子筆の「百穂先生之碑」と書かれ、百穂自筆の短歌二首が並刻されています。



うつろへる川の流れを見るにさへ
年ふりにけり国を出しより

ひとときに芽吹き立ち匂ふみちのくの
明るき春にあひにけるかも 

この歌は大正15年に仙岩峠を越えて故郷に帰った際に陽春5月の山なみを眺めて歌った一首とされます。本ブログにて紹介していますように、 この峠越えを題材とした山水画が数多く遺っています。なお碑陰には百穂の経歴と業績が記されています。



自由闊達な、かつ品のある線描が存分に発揮されている平福百穂の作品は、雪国生まれの百穂ならではの作品であり、郷里の人々の自然への賛歌とも言えるのでしょう。



共箱で二重箱の誂えとなっています。印章は贋作にも多いい印章ですので、よくよく吟味しましょう。

  

本作品は真作と断定してよさそうですね。実にいい作品・・・。

次の紹介する作品も同時期に描かれた作品と推測してます。



秋景山水 平福百穂筆 
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 白石念舟鑑定箱(平成22年)
全体サイズ:縦1980*横500 画サイズ:縦1310*横340


 

大正から昭和にかけて描かれた新南画と称せる作風そのももですね。



淡い色調で品よく描かれています。



墨で描かれた基調がなんとも奥ゆかしい。



残念ながら共箱の誂えではありません。


鑑定箱書をしている白石念舟という人物は初めて知りました。

白石念舟:昭和17年1月15日生まれ。田山方南(文部省国史編修官兼国宝鑑査官・文化財専門審議会委員)氏に師事、墨跡、古筆を学ぶ。

「文部省国史編修官兼国宝鑑査官」・・・????

 

掛け軸や南画系統の不人気により、平福百穂の筋の良い作品はともかく容易に収取できますが、ともかく平福百穂の良い作品は蒐集できるうちにしておこうかと・・。


















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