平福百穂の作品では、年季が記された作品は非常に少なく、描かれた年代を推定するのにひと苦労しますが、本作品の落款には「昭和辛未初秋」とあり、1931年(昭和6年)、平福百穂が54歳の時、亡くなる2年前の作と判断できます。
秋山渓流 平福百穂筆 昭和6年 その134
絹本着色 軸先象牙 共箱
全体サイズ:縦23 60*横665 画サイズ:縦1335*横510
晩年にこのような作風を描いたかどうかというのは、落款の書体共々、多少疑問がありますが、この点については後学の必要がありそうです。
山並みの描き方については平福百穂の特徴そのものです。
松の描き方も晩年期の円熟した作風に相違ない・・。
木々の描き方も違和感はないのですが・・。
なんとなくしっくりこないのは全体の雰囲気でしょうか?
ただし贋作とは思えず、真作には相違ないと判断しています。
箱書などにも違和感はありません。
本作品中の印章は非常に珍しい印章ですが、当方の他の作品と検証したところ真印と相違ないと判断しています。また共箱の印章についても確認できています。
昭和6年の初秋に描いたとすると、亡くなる2年前。
平福百穂の年季の記された晩年の作品は貴重です。