夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

改装された掛軸

2023-11-19 00:01:00 | 掛け軸
このたびはまとめて、種々の作品の様々な状態であった掛け軸を表具したり、改装したり、天地交換したり、保管箱を誂えたりして修復しました。

まずは改装した作品。

鍾馗之図 寺崎廣業筆 明治30年(1897年)代
紙本水墨軸装 軸先木製塗 鳥谷幡山鑑定(昭和乙亥:昭和10年晩秋)箱入 
全体サイズ:横668*縦2210 画サイズ:横510*縦1230



2023年10月改装完了:締め直し     35,000円
共箱の為 多当紙新調         1,000円

「締め直し」ですので、既存の表具材をそのまま使って修復しています。極力当時のままの表具を生かすことになりますが、既存の表具材が痛んでいないことが条件になります。本作品自体の汚れはこれ以上は落ちなかったようです。

当方の他の所蔵作品「雨中残菊図 明治30年(1897年)秋」の印章との同一であり、落款からも寺崎廣業の初期の作品と推定されます。寺崎廣業は若い頃から晩年まで鍾馗図は数多く描いていますね。

 

次は表具されていない状態である「まくり」にて同時に入手した天龍道人の作品です。しばらくどうしようかと迷っていた作品ですが、この度表具して軸箱を誂えました。

葡萄図 双幅 天龍道人筆 92歳
紙本水墨軸装 まくり状態で入手 軸先木製 誂箱
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦960*横287
2023年10月改装
双幅軸装 三段表具一文字筋廻し 35,000円
双幅軸箱            10,000円

佐賀県立博物館の所蔵されている「葡萄図」には「鵞湖折脚仙九十一歳天龍道人王瑾」の署名があり、最晩年の91歳の作品と判明している作品です。晩年に脚を折って不自由になったから「折脚仙人」という号を用いています。屏風か襖に貼られていた作品と推定していますが、最晩年の貴重な作品です。





次は作品本体が折れてしまっていたので、再表具した作品です。

湖上行島 児玉希望筆
絹本着色軸装 軸先鹿骨 共箱
全体サイズ:縦1650*横510 画サイズ:縦910*横410
2023年10月改装完了:締め直し     35,000円



作品中にオレが発生しており見苦しかった作品。

 

作品中にオレが少しでもあると掛軸では作品が台無しになります。



この作品もそのために児玉希望の良さが伝わってこないものとなっていました。



表具を直すだけで作品は蘇ります。



掛け軸の作品の良さは表具と共に楽しめることです。本作品は締め直しです。



締め直しではなく、表具を変えるのも生地や軸先の選び方から愉しいものです。



次は寺崎廣業の最晩年の佳作。

秋山雨後 寺崎廣業筆 三本廣業時代 大正5年(1916年)
絹本水着色軸装 軸先 年紀有(大正丙辰:大正5年 1916年 50歳)共箱二重箱中箱2023年4月 外箱を新調 ¥25,000
全体サイズ:縦2370*横720 画サイズ:縦1380*横500



 















表具はほぼその当時のままで状態も素晴らしい作品であり、今回は外箱を誂えました。



次は美人画です。

立美人図 伝三畠上龍筆
紙本着色軸装 軸先蒔絵 合箱
全体サイズ:縦1972*横548 画サイズ:縦411*横987
2023年10月:太巻き軸箱+多当紙新調 15,590円





 

美人画は表具が痛んだり、絵の画が剥落すると興ざめなので、絵の具が剥落しやすい作品は太巻の誂えが有効ですね。





作品のメンテは蒐集する者の務めです。費用をかけて後世に遺すことが肝要ですね。







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