
本日は寺崎廣業の晩年の作品と思われる作品の紹介です。

水墨夏景山水図 寺崎廣業筆 大正7年(1918年)頃
紙本水墨軸装 軸先骨 合箱
全体サイズ:横620*縦1980 画サイズ:横470*縦1310


寺崎廣業は大正期に入ると、一作ごとに自らの課題に挑戦する意思的な制作姿勢をみせ、画壇での地位は確固たるものとなります。

寺崎廣業の晩年は水彩画、大和絵、南画の特徴を生かした折衷様式による新たな風景画を模索するなど、終生日本画の近代化に尽くし、大正6年には帝室技芸員に任命されますが、残念ながらその2年後の大正8年、52歳の若さで没してしています。

その晩年にはとくに新南画の確立に努力していました。晩年は色彩による清新な画風と水墨による新た筆致を見出しています。

若い頃からの修練の賜物と思われる非常に筆致の早い画風を生み出しています。

これだけ描ける画家は古今にもあまりいないと言えるでしょう。今後の活躍が期待されるなけでの早すぎる死でした。

この画風は富岡鉄斎以降に廃れていく南画にひとつの風の吹きこもうとしていたのではないかと思われます。

墨の滲みと渇筆のような筆致・・。

落款と印章から最晩年の大正7年頃の作かと推定しています。

今ではあまり知られていない寺崎廣業の水墨画・・。今少し長生きしていれば横山大観らと共に今でも評価の高い画家のひとりとなっていたでしょう。