今年はすべての花の開花が早いようですね。桜は先々週は雨、先週は土曜日に強雨・・・。見どころの時期を失ってしまったようです。せめてと近場に出かけてきましたがまたも雨・・・。
自宅の庭では牡丹が咲き始めています。
これもまた早すぎ・・。
クマガイソウも咲きました。
まだ二輪のみ・・。
少しずつ繁殖の輪が広がっているようです。
貝母など庭にはいろんなものが早い・・・。
さて本日は源内焼の作品としてはちょっと珍しい作品の紹介です。「丁字風炉」という用途の作品をご存じでしょうか?
数多くの器種のある源内焼でもかなり珍しい器種です。図集にも掲載されている器種のようです。
源内焼 三彩獣面脚付唐草文丁字風炉
最上部蓋欠損 欠け補修跡有 誂箱入
作品サイズ:最大幅190*奥行170*高さ205
五島美術館出版「源内焼」掲載:作品番号114「三彩菊花山水文丁字風炉」
丁字風炉とは室内の防臭や湿度調整のために、香料の丁字を煎じて香気を出す風炉のこと。上から蓋・釜・炉の3つに分けられる。
陶磁器製や金属製のものがあり、炉に炭を入れて熱し、釜部分に水を張って丁子(クローブ)を浮かべて漂う香りを楽しんだと考えられている。
丁字はフトモモ科の常緑高木で芳香があり、葉は楕円形で両端がとがっており、筒状の花が房状に集まってつき、つぼみは淡緑色から淡紅色になり、開花すると花びらは落ちる。
つぼみを乾燥したものを生薬や香辛料にし、また油をとる。モルッカ諸島の原産で、東南アジアやアフリカなどで栽培。クローブともいう。
本作品は全体に唐草文の陽刻が施されています。源内焼らしくどこかやはりエキゾチックな感じのある作風です。
本作品は残念ながら最上部にあるべき蓋が欠損していると思われます。脆い胎土の作品ですので、源内焼の複雑な構成の器が完品で遺っているのは珍しいのですが、蓋がないのは本当に残念です。
そこで当方で所蔵している作品の香炉などの蓋を載せてみました。
2種類ほどの蓋がサイズ的に合うようですが・・。
ただし蓋を受ける部分の作りから、もともと蓋がなかった可能性もあります。
窯部分は下記写真のようになっています。実際に使ったような跡があります。
唐草をまるで波のようにデザインしてあります。
下記の写真は汚れを落とす前の状態です。
源内焼のデザイン性の優れた特徴の出ている作品です。精緻な陽刻文は土型ではなく、堅木などを用いた可能性が高いですね。
この作品は図集にも同じ作品は掲載されていません。数多く作られたものではなく注文品であったと推定されます。
「丁字風炉」自体が裕福な家にて使われたようですので、大名家や公家の注文品であったかもしれません。もともと源内焼は大名家などの中・上級武家に収められていた作品です。
そのため個人所蔵が多く、未だにポピュラーな焼き物でない一因になっています。ポピュラーではなく、人気も今一つなことが、当方で廉価にて入手できる一因となっています。
脚は獣面でよくできています。源内焼の脚部には巻貝形、花形、獣面、波頭形など意匠が変化に富んでいるのが特徴です。
中国風や京焼の影響でしょうか? 入手時の汚れを落とすときれいな作品となります。
こびりついている土は発掘品と見せるためにわざとつけたのかもしれません。洗うときれいに落ちます。また写真では解りませんが、源内焼には特有の匂いがあります。これは所蔵していくうちに解ってくることです。
作品の汚れを落とさない方がいますが、それは大きな間違いです。適切な方法できれいにしておくのが基本です。
この手の参考作品は下記のものがあります。
参考作品
五島美術館出版「源内焼」掲載:作品番号114
三彩菊花山水文丁字風炉
作品サイズ:高さ191*幅248*201
参考作品 サントリー美術館蔵
古清水焼 色絵家形丁子風炉
江戸時代 18世紀
作品サイズ:幅249 奥行222 高314
茅葺の二階家を象ったいわゆる丁子風炉で、厠などで丁子(クローブ)の皮を煎じ、芳香で臭いを消すための道具である。
一階と二階が分かれ、屋根の頂部が蓋となり、一階の風炉に火を入れ、二階の釜で丁子を煎じる。一階四面には柴垣が巡って菊が咲いて蔦が這い、二階四面にも菊や撫子・桔梗等の秋草が咲く。屋根の苔、黒木の柱、網代戸など佗びた数寄屋の意匠に、飾り金具の付いた欄干、扇形の窓、軒下の茄子形の鐶付など、淡黄地に緑・青・金の彩りも相俟って、空想的な華やかさを漂わせる。
(『日本のやきもの千二百年 奈良三彩から伊万里・鍋島・仁清・乾山』サントリー美術館、2001年)
参考作品 愛知県陶磁美術館蔵
古清水焼 色絵松竹梅文丁字風炉
江戸時代後期 19世紀
作品サイズ:幅175 底径106 高223
この風炉の上部は透かしのある蓋を伴い、下部は安定感のある木瓜(もっこう)形に貝のような耳が付けられています。青と緑と金を基調に、松竹梅文が全体に描かれ、瀟洒な作品になっています。
源内焼は距離的にも近い同時期の古清水焼の影響を少なからず受けていた可能性が高いでしょう。また源内焼には皿や鉢の作品が圧倒的に多いですが、その他の器種として蓋付碗、水注、銚子、手付盃、托、硯屏、水滴、香炉、鈴、そして本日紹介した丁字風炉が知られていますが、皿や鉢の作品に比してその量は目立って少ないとされています。
上記の写真の2作品のように源内焼はこれまでの焼もものにはない異国情緒豊かな作品ですね。そのデザインと技術の優秀さは世界的に見ても非常に際立ってます。
香炉部分の裏の欠けは当方で金繕いしています。
飾って鑑賞するには支障がありません。
源内焼の奥は深い・・・・。
*なお本ブログは売買のためや見て頂くためのものではなく、主たる目的は当方の作品整理のためです。どこでもブログを覗いて作品を参照するためのブログ記事ですのでご了解下さい。