夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

氏素性の解らぬ作品 影青輪花蓮弁盃 宋(北宋)?時代 その9

2021-04-05 00:01:00 | 陶磁器
畑から採ってきて活けていた梅類などの花が散ってきたので、家内が庭に咲き始めた「バイモ」と「キブシ」を天神様の棚に活けてくれました。



「バイモ」は親戚の方の山からいただいて移植したものです。



「キブシ」も移植したものです。移植したのが子供が生まれた頃ですからすでに7年近く経過してようやく一人前の花が咲き始めました。



さて本日は影青の茶碗の作品の紹介です。影青の作品に魅せられてから、入手しやすい碗の作品をメインに機会あるごとに購入していますが、未だに各々の蒐集した作品の時代の確証は得られぬままです。凝りもせずにその作品も9作品目となりました。



影青輪花蓮弁盃 宋(北宋)時代 その9
合箱
口径120*高さ42*高台径35



今までの作品は勢いのある刻花という陰刻のあった作品でしたが、今回は少し小さ目で勢いのある刻花はなく、「影青輪花蓮弁盃」と仮に名付けています。



「影青刻花」とは「青白磁に刻花したものを影青(いんちん)と呼び、刻まれた筋に釉薬がたまり、そこだけ少し色が濃くなり、なんとも静謐にして艶かしい様相となっている作品」のことで、その文様が花の文様となり珍重されているよいうです。

そもそも影青の語源は、白磁に印花や刻花で文様を表し、その上から薄青色の釉薬を施した際に凹んだ”影”の部分に釉薬が深く溜まり、澄んだ深みのある美しい”青”色を呈することから付けらたとされているようです。影青の技法は北宋時代に生まれ、南宋時代に完成しています。本作品は陰刻がないため、この作品を厳密には「影青」とは称しないかもしれませんが、この手の作品も影青としてよくみかます。



宋代、とくに北宋時代には高台を低く作り、円筒形の台を当てて焼いているため、基本的に褐色に台の跡が残っています。まずはこの有無が真贋鑑定のポイントの一つですが、近代作でも意図的にこの跡を付けている作品もあるようですし、当然模倣作品も同じ焼方をしているでしょう。



13世紀の中国南宋時代後期に江西省景徳鎮窯で焼成された青白磁が最盛期とされていますが、これより古い12世紀前半までの北宋時代の影青が数が少なく珍重された作品で、「なんでも鑑定団」では「市場にでれば最低でも500万円、高ければ2000万円」と評するほどです。これはいくらなんでも大げさな評価でしょう。発掘品が多量に出回ってからは二桁も値段が下がったと思われます。



南宋の時代は大量生産を始めており、その時代の作品は横から見ると北宋時代に比べて形がはんなりとなりふっくらしています。また、高台がわりと大きく、すべすべしているとされています。



北宋時代の青白磁は窯道具の台に乗せて、鞘に入れてひとつずつ焼成するため、前述のように高台の裏に窯道具の鉄色の跡があるのが基本とされます。



陰刻は箆か櫛でささっと雲とも水の流れともつかない文様を描いていて、精密に細かく描かれていることはありません。その陰刻は勢いがあります。唐子などの詳細な文様の作品は間違いなく近代作のコピー作品と断定していいでしょう。

薄作なので割れてしまうため、状態の良い青白磁が出るのは極めて少なく、多くは割れ跡の補修などがあります。

本作品は陰刻のない作品ですが、蓮弁上の形となっています。



影青の記事では下記のような興味深い記事があります。

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北宋影青の参考記事から

定窯と同じ時期の北宋影青の作品だが、これほど数多く優品がマーケットに出回るとは思いもよらなかった。35年ほど前、フィリピンのマニラで素晴らしい影青の鉢を見つけた。値段を聞くと350万くらいだった。その頃そこそこの家が1軒買えるような値だったように思う。粘って250万くらいにネゴをした。現金の持ち合わせがなかったので、会社の代理店から金を出してもらおうと交渉に行った。セキュリティー上の理由で手持ちのキャッシュがないのでちょっと待ってくれと言われた。半日ほどかかってキャッシュを集め、段ボール箱に入れた。当時フィリピンペソは高額紙幣がなく、かなり大きな箱に金を詰め込んだのを覚えている。

ガードマンを雇って骨董屋へ引き返したら、シンガポールのローさんという業者に先に買われてしまっていた。ワーワー言っていると、「アンタ売り先があるの?」とローさんに聞かれ「こんな高価なもの売り先もないのに仕入をしたらだめだよ。」と逆に説教食らったことが昨日のように思い出される。その時の青白磁の鉢と殆ど同じものが今10~20万くらいで入手できるのだ。しかし香港ではもうそろそろ値上がり気味だ。「日本でいい物があれば買いますよ」と香港の親しいディーラーが、時々言うようになった。今この種の中国陶磁が世界で一番安いのが日本のようです。

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中国陶磁器の値段の変動は大きいようです。緑釉の作品や三彩の作品もそうですが、発掘によって大量に出回るなど、景気と市場に出回る作品数で中国陶磁器の値段が決まるのでしょう。影青の作品も北宋であろうと南宋であろうと今はそれほど高価ではないようない思われます。

ともかく絵画もそうですが、市場の価格、とくに中国市場に惑わされてはいけませんね。好きなものは好き、よくないものはよくないという美的感覚だけを頼りにするのが一番なのでしょう。



北宋時代の作品は胎も釉も薄く、まるで紙のように軽く、触ると手が切れそうなほどシャープです。南宋時代になると、胎も釉も少し厚みが出て、優しさと艶やかさと瑞々しさが出ます。時代の好みと、技術の向上により影青は南宋時代に最盛期を迎えたようですが、北宋と南宋・・、各々好みがあるようです。



ともかく氏素性の解らぬ作品ですが、非常に壊れやすい作品なのできちんと保管しておきました。


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