T君がチーズをおすそ分けしてくれた。店で使うチーズの盛り合わせ用で仕入れたものが、希望のものより大きくとても使い切れないという理由で。それは「マロワール」というフランスのウォッシュタイプのチーズ。臭いチーズの代表がこのウォッシュタイプ、だからT君に「こんなの出しても食べないんじゃないの」と聞いてみた。予想通り殆ど食べないという返事であった。まして今回は大きめもの、使いきれるわけはない。そのおかげでこちらに回ってきたので個人的には良かったのだが、このウォッシュタイプ冷蔵気に入れると臭いがどうしても漏れて、庫内がその臭いで充満するという欠点がある。うOちのような臭いはあまり好ましくない。こんかいのものはまだ若いので暫く熟成させないといけない。ということは自ずと長期滞在となってしまうのだ。
フランス料理のレストランでも大体チーズの盛り合わせというのはある。しかし、そこで出すものの一つのパターンとして、始めは品揃えが充実していたものが徐々に凡庸になるというのがある。当初シェーブル(山羊チーズ)が二種、ウォッシュが二種、そのほか白カビ青カビハードと七八種類用意していたものが、いつしかシェーブルがなくなり、ウォッシュもよりくせのない「ピエダングロワ」などの一種類となり、ハードは「コンテ」や「ミモレット」(色がオレンジで見栄えが良い)、青カビはゴルゴンゾーラ(知名度が高く青カビの中では食べ易い)、そして間違いなくあるのが白カビのカマンベール、計五種類くらいの盛り合わせとなってしまうのだ。個性の強いものは一般的に好まれないという理由があるので、この結果は止むを得ない。シェーブル、ウォッシュなど原価も高いし、出ないものを仕入れても無駄になるだけだ。
にも拘らず、T君もよくこんなものを注文したものである。自分が食べてみたいという興味があってのことかとも思うが、こちらにとってはいつでもウエルカムである。