ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

すばらしき世界

2021年04月17日 | 映画


映画「すばらしき世界」を見る。映画館は今年二回目。一回目が何だったかは思い出せないが、確か同じく日本映画で面白くなかったことだけは覚えている。今回の映画は、監督西川美和、主演役所広司のムショ帰りの男の話。母親に捨てられヤクザになった男が、何度か刑務所に入った後組を抜け一匹狼となり、その後やむにやまれぬ殺人事件を起こし刑期を終え出てくるところから物語は始まる。基本堅気として更生しようとする姿を描くのだが、この手の物語だと、大体かつての仲間が登場してまた悪の世界に引きずり込まれ悲劇で終わるというのが定番。見る方も、何とか更生してほしいと願うのだが裏切られる。そこで過去を清算するため関係者を皆殺しにする、ということであれば観客はカタルシスを得られるが、それは娯楽映画であれば可能。「ヒストリー オブ ヴァイオレンス」のように。しかしこの映画は実在の人物がモデルの話なのでそうはいかない。

まあ良い人に恵まれいい方向に行くのだが、一本木ですぐかっとなり暴力で解決するという性癖はなかなか治らない。例えば街で嫌がらせをしている人間がいたら見過ごすことができない。そこまでは良いのだが、暴力が度を越している。人間的には魅力的なのだが、そこに秘めた暴力性が時に協力者をひるませる。それでも必死に更生しようともがく主人公、そんな人物を役所広司は本当うまく演じている。定番は回避するがちょっと泣ける最期もあり、見ごたえのある作品となっている。

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