ピカビア通信

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忘れられた人々

2022年04月24日 | 映画

 

アマゾンプライムでブニュエルの「忘れられた人々」を見た。メキシコ時代1950年製作の映画だ。貧困問題を正面から捉えた映画だが、不思議と、社会派監督が撮ったようなこれでもかこれでもかと悲惨な現実を見せられる後味の悪さはなかった。ちょっと幻想的なシーンも挿入されて、ブニュエルらしさを感じさせる映画となっている。但し内容は、貧困にあえぐ最下層の人々の話で(日本で言えば戦後の闇市が舞台のような)、学校に行ってない日本で言えば小学高学年から高校生くらいの不良グループが、日々金をくすんだりの悪さをして過ごす姿を追っていく。そこにグループのリーダー的少年が鑑別所から逃げてきたことによって話は一気に更に悪い方に加速していく。

兎に角このリーダー(エイドリアン.ブロディをイケメンにしたような)が悪い。更生しかけた少年が彼の所為で最悪の事態に引きずり込まれたり、基本全てが見てられないような方向に進む。他の登場人物も、隙あらば少女をものにしたい盲人だったり、息子をネグレクトする母親だったり、小児愛好者だったり、まともと思った一家も最後にとんでもないことするしで、まあまともなのは殆どいない。そんな数少ない正直な働き者の若者はリーダに撲殺されるしと悲惨な話しのオンパレードだ。普通だったらこんな内容だと途中で止めるのだが、最後まで見させる何かがあった。突き抜けたブニュエル映画の魅力とでも言おうか。見終わった後に、これは傑作ではないかとさえ思った。「昇天峠」と並び「忘れられた人々」は、ブニュエルのメキシコ時代の個人的代表映画となった。

 

 

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